この地球最大の謎「生命は、どうやって生じた」のか…じつに、40億年もの生物進化から見えてきた「意外すぎる盲点」
ダーウィン進化論についての誤解
ダーウィン進化論の自然選択は、「適者生存」と混同されることも多々ありました。これは英国の哲学者ハーバート・スペンサー(1820~1903)が著書『生物学原理』で使いはじめた言葉で、人間社会は段階的に発展・進化していくという考えです。 社会は直線的によりよいものへと進化する、というところは、ラマルクの考えた進化にも似ています。 進化がこのようなものであるならば、進化の流れに適した者が生き延びていく一方で、当然、落ちこぼれる者も出てきます。 こうした適者生存の原理が、あたかもダーウィンの考えた進化の原理でもあるかのように曲解されて、帝国主義による植民地支配や人種差別にダーウィン進化論が悪用されてきた歴史があります。現在でも、資本主義の中でうまく立ち回ってお金を稼ぐ人が「適者」であるというように、社会的・経済的格差を容認するために使われているようです。 ここで、図「生命の樹から分子系統樹へ」を見てください(この図は、先の記事〈「生命誕生は陸上」説で生じる謎と「うまい具合のシナリオ」〉でも取り上げたものです)。ダーウィンの「生命の樹」でも、分子系統樹でも、生命の根元は一つのところから始まっていて、そこから枝分かれしながら広がっています。しかし、実はどちらの図にも上下関係は明記されていません。約40億年の生物進化の中で、最初の単細胞生物は分裂しながら生き延び、いまもさまざまな単細胞生物として存続しています。 その一方で、真核生物では細胞間で役割分担が進み、生殖をになう「生殖細胞」はある意味、単細胞生物と同様に40億年を生きつづけてきたともいえますし、それ以外の「体細胞」は、個体の生長や死とともに使い捨てられるようになりました。 そのように形を変えながら動物や植物として今日まで生き残っている生物種は数百万種あると推定されていますが、それらはいずれも、系統樹のさまざまな枝の先に位置する、進化の最先端にいる生物たちなのです。
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