宇宙から地上の新たな価値を見つけ出す。株式会社天地人 櫻庭康人さん&百束泰俊さんインタビュー
ビジネスと技術、両側から形にするには?
──事業を成長させるなかで、難しい局面はありましたか? 櫻庭:基本的にはなかったと思いますが、百束さんのチームに無理を言って「ハードルを超えてもらう」ということはあります。ビジネス側から見た「ニーズ」と、技術側から見た「できること・やりたいこと」を結びつけるのは、お互いにハードな面かもしれません。ただ、百束さんがチームにうまく翻訳して伝えてくれるので助かっています。 百束:僕は技術側の人間ですが、ニーズとやりたいことの「トンネルを両側から掘る」のって、結構重要だと思うんです。 スピード感をもって事業を進めるには両側から掘って、その中間で出会わなければいけない。だから、そこを俯瞰して見たうえで、マネジメントを行なうことをいつも意識しています。意図的に「技術の話だけをしよう」ということもあるし、「こっちから掘るぞ!」と決めたときには自分が率先して旗を振ってみんなでがんばる、みたいなことも。 スタートアップで働く技術系の人って、事業側がどうなるかってすごい関心があるんですよ。だから無理難題であっても、一体感をもって取り組むことが大事だと思いますね。 ──チームビルディングで気をつけていることや、ご自身にとってのリーダーシップとは? 百束:僕は「壁打ちマネジメント」が大事だと思っています。 最近、メンバーに「百束さんは壁ですね」と言われて、障壁という意味かと思って一瞬落ち込んだんですが、壁打ちの壁だと聞いて、うれしくなりました。 天地人はいろんな専門家が混ざって仕事をしているので、全体を見るのが難しくなるケースも多いんです。そんなときに僕で壁打ちをしてもらって、僕が知っていること、見えているものを伝えながら話し合うことで、複雑な全体像を整理して理解できたり、課題が共有できたりします。 そういう意味では、スタートアップでのリーダーシップには、コーチング的役割も大事かもしれません。 櫻庭:天地人は海外に拠点を持つメンバーも多いので、創業してからずっと「フラットとグローバル」なチームを目指しています。 私は社長ですが、そもそも偉そうな人が好きではないので、みんなで平等に働ける組織を創業時からずっと意識しています。カルチャーとしても、気楽に話せる環境をつくっていきたい。とはいえ、「もっといいものがつくれないか」と無理なことをお願いすることもありますが(笑)。 自分が目指すリーダーシップは、サーバントリーダーシップ(奉仕するリーダーシップ)でしょうか。優秀な人たちが結果を出しやすくなるようにサポートするのが自分の役割だと思っています。 ──お二人の熱意の源泉は? 目指すゴールは何でしょうか。 百束:僕の場合は、悔しさとか「なんでうまくいかないんだろう」という気持ちがパワーに変わっています。 自分はJAXAでずっと衛星の仕事をしてきましたが、宇宙関連で世の中の話題になることといえばロケットの打ち上げばかり。「衛星はこんなに役に立つものなのに!」というモヤモヤがずっと溜まってきたところがあって、それがモチベーションになっていますね。いつになったらスッキリするんでしょうね(笑) 櫻庭:私はこれまでも社会課題や「こういうものがあったら便利だよね」ということにずっと意識が向いていました。「この技術を使えばこんなことができるのでは?」と考えることがクセになっていて、不便なものをみると逆にワクワクするというか。宇宙のデータを使えばもっと大きいことができる。それが楽しくて、私にとっての熱意の源泉ですね。 目標でいうと、2030年にはグローバルでトップシェアを獲ることを掲げています。衛星データを使ったサービスはまだまだチャンスがある領域なので、大きく狙っていきたいですね。