松坂 出口はどこに? 走者を置いてのピッチング課題
松坂大輔がインディアンズを去り、メッツと契約してから3試合に登板した。が、いずれも先発の駒が足りず、今季はペナントレースを諦め、来季を見据えた戦いをしているメッツだからこそまだ許される、という内容。もしも、プレーオフを争っているインディアンズでメジャー昇格していたとしたら、すでに、先発失格の烙印を押されていたに違いない。 初登板となった現地時間8月23日(タイガース戦)、初回にいきなり、トーリ・ハンターに高めのボール球をレフトスタンドに運ばれ、先制された。2回は、2死一、二塁で再びハンターに走者一掃の二塁打を許し、直後、史上初の2年連続三冠王を目指すミゲル・カブレラに2ランを浴びている。 「予想していた以上に緊張した。地に足がついていない感覚があった。自分の中では初めて」 試合後、そう振り返った松坂。2回までの失点はその影響であることを匂わせ、3回以降はマウンドを降りる5回までパーフェクトに抑えたことから、「次に望みを持てる終わり方ができた」と手応えを口にしたものの、その後はむしろ、悪くなる一方。28日の2度目の登板(フィリーズ戦)は、4回1/3、6安打、4失点で降板。3度目の9月2日(ブレーブス戦)は、2回までに6点を失い、3回、7安打、6失点という内容だった。「何の言い訳もできない」。三連敗した夜、あの松坂が自信なさげに答えている。 原因は、どこにあるのか。 明らかなのはスピードの変化。球速がまだ本来のものではなく、調べて見ると、4シームファストボール(いわゆる直球)の平均球速は、デビューした2007年、18勝をマークした2008年は92.15マイル(147.4キロ)だったものの、今年はここまで89.1マイル(142.6キロ)だ(fangraphs.com参照)。その差は、4.8キロもある。 あるスカウトは、「球速そのものは、過大評価されている」と話したが、「それは制球力があれば、の話。松坂のように決して制球力がいいとはいえない投手の場合、ある程度、球速は求められる」と指摘した。球威さえ戻ればなんとなる、と言うことのようだが、制球力さえ向上させられれば、「その限りではない」とも言う。 「それが彼の今後のカギを握るのではないか」。 確かにそうなのだが、3回の登板を見る限り、制球力に関しては、かつての松坂のままだ。例えば、単純にストライク、ボールで比べると、昨年までの松坂は37.7%がボール。今季はサンプル数が3試合しかないものの、37.3%がボールだった。これがレッドソックスの上原浩治だと、27%程度。 四球の率は10.9%。キャリア平均が11.0%なので、取り立てて大きな変化は見られず、相変わらず良くはない。 よって、球速が戻らないなら、制球力でカバーするしかない、というスタイルへの変化は、松坂にとっては球速を戻すことよりもハードルが高いのかもしれない。