「トランプ2.0」は、米国をどのように変容させてしまうのか? 石破首相は「アキエ(昭恵)カード」の有効活用を
ドナルド・トランプ次期米大統領(以下、初出以外敬称および官職名等略)は、早くも大統領就任前にメキシコおよびカナダからの全ての輸入品に対して一律25%、中国からの輸入品には追加で10%の関税を課すと発表した。「トランプ2.0」においても、高関税を武器にして各国とディール(取引)を行う構えだ。 また、自身を起訴した政敵に対する報復に関しても繰り返し言及している。さらに、「トランプ2.0」で、メディアが自分を批判しないように、その対策にも乗り出した。 「トランプ2.0」は、米国をどのように変容させてしまうのか。石破茂総理はトランプとどのように向き合うべきかーー。
共和党から支持される高関税
まず、トランプが最も重視している関税からみていこう。メキシコ、カナダおよび中国から米国へ輸出される自動車、自動車部品、肉、魚、果物、飲料、砂糖、家具および玩具等、広範囲にわたって高関税が課されれば、インフレで苦しむ中間所得者層や低所得者層をさらに追い込むことになる。今回の米大統領選挙で、カマラ・ハリス副大統領は、「トランプ関税」を「トランプ消費税」と呼んで、関税が生活費と直結することを有権者に気づかせようとした。 しかし、英誌エコノミストと調査会ユーガブの共同世論調査(2024年12月8~10日実施)によれば、メキシコからの輸入品に対する25%の関税について、共和党支持者の66%が「賛成」と回答する調査結果が出た。一方、カナダからの輸入品に同率関税を課すことに関しては、同党支持者の56%が「賛成」と答え、主として移民や国境管理などで対立が際立っているメキシコに対して、より厳しい態度を示した。
フェンタニルと関税
トランプは高関税を正当化する。12月8日(現地時間)に放送された米NBCのインタビューで彼は、「トランプ1.0」において、中国製や韓国製の不当に低価格の洗濯機に対して、20~50%の高率の関税をかけた例を挙げた。この関税が、中西部オハイオ州で洗濯機を製造するワールプールの工場で働く労働者の雇用を守ったと強調し、「関税を適切に使う」と語った。 さらに、トランプは、関税が経済以外のものを得るためにも有効であるという考えを示した。その例として、非常に強力な鎮痛剤「フェンタニル」の米国への流入に対する対策がある。 米国内では、2023年フェンタニルの過剰摂取により推定で7万4702人が死亡したとみられている。トランプは、中国がメキシコとカナダを経由して米国へフェンタニルを輸出しているとみており、関税をかけて中国に対策を迫った。 フェンタニルの過剰摂取による死亡率は、南部ウエストバージニア州や中西部オハイオ州など、主に炭鉱等で働くトランプ支持の労働者がいる州が高い。彼等や若年層の失業者が、フェンタニルを過剰摂取し、死に至るという事態が起きている。 ちなみに、ジョー・バイデン現大統領の地元デラウェア州は、2022年フェンタニルの死亡率が、ウエストバージニアに次いで第2位であった。バイデンもこの問題に直面している。