「トランプ2.0」は、米国をどのように変容させてしまうのか? 石破首相は「アキエ(昭恵)カード」の有効活用を
トランプの個人弁護士
また、同インタビューの中でトランプは、自分を起訴したジャック・スミス特別検察官の捜査についてもコメントした。トランプは、米司法省長官と連邦捜査局(FBI)に指名したパム・ボンディ氏とカシュ・パテル氏に判断を任せると語ったが、スミスを「非常に腐敗している」と強く非難することを忘れなかった。ボンディはトランプ弾劾裁判におけるトランプの弁護士であり、彼に対して忠誠心が強い。 他にもトランプの報復人事に関しては、彼がニューヨーク地裁で元不倫相手に対する口止め料の帳簿改ざんで重罪犯になった際のトランプ側の弁護士トッド・ブランシュ氏の司法副長官指名を検討していることが米メディアによって伝えられている。仮に2人が米議会で承認されれば、司法省のナンバー1と2が、トランプの個人弁護士が就任することになるのだ。
避けられない「司法の弱体化」
「トランプ1.0」においてトランプは、16年米大統領選挙で、早い時期から自分を応援したジェフ・セッションズ氏を司法長官に指名したが、セッションズはロシアの2016年米大統領選挙介入に関する司法省の調査を阻止しなかった。それに対して、トランプはセッションズを解雇した。 セッションズの後継者として司法長官になったウィリアム・バー氏は、20年米大統領選挙で不正はなかったと、選挙後の議会で証言を行った。トランプは2人の司法長官が自分に忠誠心がなかったとみているのは確かだ。 その教訓からトランプは、自身の弁護士を司法省のトップとナンバー2に指名して、「トランプ2.0」では独立機関であるはずの司法省を自分の支配下に置こうとしている。 一方、極右の弁護士パテルもトランプ信奉者の1人であり、米連邦捜査局(FBI)の解体論者でもある。パテルは著書『政府のギャングスターズ』の中で、現政府の中に存在する「闇の政府」に触れ、そのメンバー60人を実名で挙げた。ボンディとパテルは、トランプの意向を汲んで、チェイニーや、スミスと彼のチームメンバーの責任を徹底的に追及するだろう。 ちなみに、バイデンは退任前に、チェイニーなどに「予防的恩赦」を出すことを検討していると米メディアは報じた。 トランプの個人的な恨みに対する報復を実行に移すのが、ボンディやパテルである。率直に言ってしまえば、彼らはトランプの自己愛を満たすための「チェスの駒」なのだ。 また、ボンディとパテルは、司法省とFBIをトランプに忠誠心が強い職員で固めるかもしれない。そうなれば、職員が自分の発言や行動がトランプに対する「忠誠心ファースト」に沿ったものなのか、常に「自己検閲(self-censorship)」をする可能性が高い。さらに進んで、忠誠心に基づいて意思決定をするようになれば、司法の弱体化は回避できない。