「ライターで炙られ…」義父からの「壮絶な虐待」と母の知り合いからの「性的虐待」…私生児で被虐待児の31歳ハーフ男性が生きるための編み出した「処世術」
自分の居場所がない人生
義父による虐待の詳細は前述の著書に譲るが、読むに耐えない悲惨なものだ。ブローハンさんは人間としての尊厳を奪われ、被害者でありながら虐待の事実を秘め事として隠蔽する努力を続けた。また義父から逃れた先においても、母親の知り合いの家で性的な虐待に遭っている。 居候という肩身の狭い立場で幼いブローハンさんが編み出した処世術には、思わずなるほどと首肯させられる。 「児童養護施設に保護されるまで、私はさまざまな”知らない大人たち”と過ごしました。もちろん不安感は常にありました。こちらの態度によっては不利な立場になってしまうわけですから。しかし同時に、それはこちらの出方によってある程度状況をコントロールできるということでもあります。そのときに大人たちが何を求めているか、徐々にわかるようになってきました。 学校においても同様です。小学校のときはゲームが流行っていて、私はゲームが得意だったので、『ここ、クリアしてよ』というような依頼をきっかけに仲良くなることが多かったです。相手にとって重宝される人間になることで、仲間にしてもらえることは幼いときから学んだように思います。 ただ、いずれも欲しくて磨いたわけではないコミュニケーション能力ですよね。嫌われて自分の居場所を失うわけにはいかないので、自然と身についたように思います」 後編記事『「何かあれば強制送還がされるのでは…」フィリピン国籍を捨てた31歳ハーフ男性が憂慮する日本社会の”優しさが生む分断”』へ続く。
黒島 暁生(ライター・エッセイスト)