【漫画】解けるまで”呪い”が解けない?…数学オリンピック予選問題を、可愛いキャラとラフな言葉で分かりやすく解説する漫画に「神漫画」の声
コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、きつねねねさんがX(旧Twitter)に投稿した『こんな始まり方ですが一応数学オリンピック予選2024解説漫画です』をピックアップ。 【漫画】可愛いキャラクターの解説で数学に親しみやすさを持てる…数学オリンピック予選問題解説漫画に「勉強になる!」の声 作者のきつねねねさんが5月6日に本作をX(旧Twitter)に投稿したところ反響を呼び、2.9万以上の「いいね」が寄せられ話題を集めている。この記事では、きつねねねさんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。 ■マスコットは解説役? 数学オリンピック予選問題2024年を解くまで獣化が解けない呪いにかかった主人公は、落ちている問題を1匹で解くことになった。予選通過ボーダーは6点、1番2番は順調に解くことが出来ていた主人公だったが、4番の黒石と白石の問題で少しつまずいてしまった。 「nを0以上5⁵以下の個数とする。黒石n個と白石5⁵-n個を横一列に並べ、次の操作を5回繰り返す。 石の列を左から順に5個ずつ組にする。各組に対して、その組に属する5個の石を、それらの5個の石のうち多い方の色の石1個に置き換える。 最初の石の並べ方によらず、最後に残る1個の石が必ず黒石であるようなnとしてありうる最小の値を求めよ。」 主人公は「石が少ない最後から逆算して考えると良さそう」と考える。まず最後の1手前では黒が3個以上無いといけない。そのため、難しそうなのは2手前以降になる。黒石に化ける石5個組を「黒組」と言うことにすると、2手前では黒石が3つ以上出来ないといけないのだ。どんな並べ方でも黒組が3つ以上できる最小の黒石の個数…。そう悩んでいると「黒石ばっか考えちゃダメだよ」とネコが現れた。問題を解いていると聞いて手伝いに来てくれたのだ。 「どんな○○でも成り立つ」系のものは極端で都合の悪い状況を考えるといい。そんなアドバイスをネコから受けた主人公は、黒石が多いのに白組が3組できちゃう状況を考えてみる。白組を作るには白石が3つ必要だから、白組3つは白石最低9個あれば作れる。逆に白石が8個しかなければ、白組は2組しか作れない。そのため残りの17個が黒石であれば良いのだ。3手前は白組が9組できたらギリギリアウト、つまり白石が27個あったらアウトなため、白石が26個なら絶対セーフ!アウトな白石は3の累乗で増えているため、5手前だと3⁵となる。そこから、黒石の個数を求めたら解けたのだ。 黒石と白石の視点の切り替えが重要な問題だったのだ。 その後も難題ばかりの数学オリンピック予選問題だったが、ネコとネズミを会わせたら面白そうだったからという理由で呼ばれたネコのおかげで、無事ボーダーである6点まで解くことが出来た。「これでようやく元の姿に戻れるね」そう思っていたが、主人公は元の姿には戻らない。主人公には、ネズミの姿に未練があるのだ。 漫画は基本、マスコットが解説役なため、主人公もネズミになれば解説役ができるかもしれないと思ったのだ。そのため「10番の解説は僕がやる‼」と意気込み、無事解くことが出来たのだった。元の姿の戻ることが出来た主人公はネコのおかげで戻れたと感謝を伝えると、ネコは「ほんとは食べたくて仕方なかった」と本音を漏らしたのであった。 数学オリンピック予選2024の問題解説を分かりやすく解説した本作。ネット上では「私がきつねねねさんを尊敬する理由がこの漫画に詰まっている!」「思考の途中の言語化が上手で、キャラがとにかくかわいい!」「分かりやすくて勉強になる!」「神漫画!」といった多くの声が寄せられている。 ■「数学をおもしろいと感じることが多いので、その気持ちをわかりやすく漫画で伝えたい」作者・きつねねねさんの語る数学愛や漫画創作の裏側 ――「数学オリンピック2024解説漫画」を創作したきっかけや理由をお教えください。 元々「軽率に数学漫画シリーズ」という、男の子が小さい動物と一緒に数学を楽しむ漫画を定期的に描いていました。数学をおもしろいと感じることが多いので、その気持ちをわかりやすく漫画で伝えたいという思いで描き始めました。 当初はTwitterなどでの反響は芳しくありませんでしたが、昨年の数学オリンピック予選2023年解説漫画が1000いいね以上の反応を頂き、とても驚いた覚えています。そこで今年も同様の解説漫画を制作し、超えると思わなかった前作を上回る反響をいただきました。 ――「数学オリンピック2024解説漫画」の中で気に入ってるシーンがありましたら、理由とともにお教えください。 「ギリギリアウトな石の個数」や「nをイジる」、「二乗で爆発」といった、実際の数学の試験や論文では使われない、ラフな言葉を使ったことがお気に入りです。数学は厳密に行うべきですが、厳密にすればするほど、何を言いたいのかといういわゆる「お気持ち」の部分は伝わりにくくなります。漫画の口語で解説を行えるという利点を活かして、思う存分「お気持ち」を描いたところがこだわりです。 また、人間が獣化したり変身したりする話が好きなので、数学の解説には全く不要な要素ですが無理やり詰め込んだこともお気に入りです。もしかしたら、それで親しみやすさが生まれ反響に繋がったのかもしれません。 ――解説が分かりやすいと話題の本作ですが、数学が得意になるための秘訣などありましたらお教えください。 漫画を描くことです。私自身、何かを「理解した」と言える基準は「説明できるようになった」ときだと思っています。そのため、私は説明の手段として漫画を活用しています。「この学んだ内容で漫画を描こう」という気持ちで学習を進めることができますし、描くことで自分が理解できていない部分の発見にも繋がります。実際に授業中にメモとして数コマの漫画を描いていましたし、今回の数学オリンピック解説漫画もその一例です。 漫画が難しければ、友達に教える、ぬいぐるみに話しかける等でも良いと思います。学んだ内容を他人に説明することはアウトプットを増やし、より深い理解につながると思います。 ――きつねねねさんの考える数学オリンピックの魅力や数学の面白さについてお教えください。 数学オリンピックの問題は一見すると非常に難解で、解き方が分からないものが多いのが特徴です。しかし実際には、特殊な知識を用いずとも解ける問題が大半を占めています。 思いもよらない着眼点から解法を思いついたり、エレガントな解説を見たときの喜びは、他に類を見ない体験です。例えば、今回の数学オリンピック予選の問題で、7番のエレガントな別解をフォロワーの方に教えていただきました。そうした新たな発見の連続が、数学オリンピックの魅力だと感じます。 ――きつねねねさんの今後の展望や目標をお教えください。 今後も数学オリンピック解説漫画の制作を続けるとともに、受験数学や大学数学の分野にも挑戦したいです。数学の面白さを様々な角度から伝えられるよう、作品の幅を広げていきたいです。 ――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へメッセージをお願いします。 今年(2024年)の夏東京で開催されるコミックマーケットに、もし抽選に漏れなければ数学漫画をいくつか販売する予定なので、よければぜひお立ち寄りください! また実は、普段Twitterでは動物っぽいキャラクターのイラストや漫画を描いています。そちらもぜひ見ていただけたら嬉しいです。