米民間企業の月着陸船「Nova-C」月面で撮影された新たな画像公開 着陸時の詳細も判明
アメリカの民間企業インテュイティブ・マシーンズとアメリカ航空宇宙局(NASA)は日本時間2024年2月29日、インテュイティブ・マシーンズの月着陸ミッション「IM-1」の月着陸船「Nova-C(ノバC)」が月面で撮影した新たな画像を公開しました。同日に開催されたテレカンファレンスでは着陸時のより詳しい状況が語られています。【最終更新:2024年2月29日12時台】 今日の宇宙画像 IM-1はインテュイティブ・マシーンズ初の月着陸ミッションで、着陸船のNova-Cにはアメリカ航空宇宙局(NASA)の商業月輸送サービス(CLPS)の下で選定された6つのペイロードと民間の6つのペイロード、合計12のペイロードが搭載されています。 IM-1ミッションのNova-Cは日本時間2024年2月15日にスペースXの「Falcon 9(ファルコン9)」ロケットで打ち上げられた後、日本時間2024年2月23日8時24分に月面へ着陸することに成功しました。アメリカとしては1972年12月に実施されたアポロ17号以来約51年2か月ぶり、民間としては世界初の月面着陸(軟着陸)です。ただ、計画を上回る速度で接地したとみられるNova-Cの機体は着陸後に傾き、月面で横転していることが明らかになっています。 こちらが今回公開された画像の1つで、着陸後にNova-Cに搭載されている狭視野カメラを使って撮影されました。前述の通りNova-Cは月面に横転した状態で安定しているため、機体の上部から下部を見下ろすような角度で設置されているカメラの視野に月の地平線が入っています。
インテュイティブ・マシーンズとNASAが新たな画像の公開と同時に開催したテレカンファレンスでは、IM-1ミッション着陸時のより詳しい状況や最新の運用状況が語られました。 前回のテレカンファレンス(2024年2月23日開催)では、着陸時に使用するはずだったレーザー距離計が使用できない状態になっていることが判明したため、精密着陸技術の実証用ペイロードとして搭載されていたNASAのドップラーライダー「Navigation Doppler Lidar(NDL)」をナビゲーションシステムに組み込むためのソフトウェアを急遽開発して着陸が行われたと説明されていました。 しかし、海外メディアのSpaceNewsによると、NDLからのデータが有効であることをソフトウェアに示すフラグが見落とされていたため、Nova-CのナビゲーションシステムはNDLの高度測定データを処理できず、実際に利用できたのは慣性計測装置(IMU)と光学ナビゲーションのデータのみだったことが今回明らかにされました。 高度測定データを利用できなかった結果、実際の高度よりも高い位置を飛行しているとナビゲーションシステムが判断したまま、Nova-Cは目標地点から約1.5km手前の高地に計画を上回る速度で接地することになってしまった模様です。接地時の衝撃で少なくとも着陸脚の1本が損傷したものの、エンジンが噴射し続けていたおかげで機体は直立した状態をしばらくキープすることができ、エンジンの出力が低下するにつれて穏やかに横転したとみられています。 次の画像も今回公開されたもので、Nova-Cの着陸時の様子が捉えられています。1本の着陸脚の支柱が機体から外れたか折れているように見える他に、月面のレゴリスが吹き飛ばされている様子も写っています。インテュイティブ・マシーンズやNASAは画像のキャプションにて、Nova-Cの着陸脚が接地時の衝撃を吸収するとともに、まだ噴射を続けていたエンジンが安定性をもたらしたと説明しています。