新興国向け「マイルドハイブリッド」の時代が始まる 2016年クルマ業界展望
新興国の成長でクルマ市場は今後も拡大していくとみられます。自動車が世界で増えれば課題になるのが環境対策。モータージャーナリストの池田直渡氏は、そこでクローズアップされる自動車の環境システムは、現時点では「マイルドハイブリッド」だと指摘します。 【写真】「CVT」の終わりは日本車の始まり 2014年クルマ業界振り返り マイルドハイブリッドとは、あくまでエンジンを主要動力源とし、それをモーターがサポートするという考え方のシステムで、同じハイブリッドでも、大容量のバッテリーだけで走行できるプリウスのようなストロング方式とは異なります。 小型のモーターと電池によるシンプルな仕組みのマイルド方式が期待されそうなのはなぜでしょうか。キーワードは「拡大する新興国市場」です。池田氏の解説です。
新車販売が世界で1億5000万台の時代に
自動車の生産台数が増え続けている。例えば、トヨタもフォルクスワーゲンも、2000年頃の生産台数は600万台に達していなかった。それが今では1000万台オーバーである。 別の指標を見てみよう。ここ数年世界の新車販売台数は3%前後の成長を遂げている。計算上、年3%の成長が25年続いたら新車販売台数は倍になる。現実にはその間にサブプライムローン問題やリーマンショック、東日本大震災のような巨大な経済ショックがあり、3歩進んで2歩下がっている。それでも基調的には自動車は増え続けている。増え続ければ地球環境と資源の問題は深刻になる。そういううねりの中で自動車をサステイナブルな産業として行くためには、だからこそ環境と省資源対策は避けては通れない。 現在世界で約1億台になっている新車販売台数は、向こう20年の間には、新興国の成長で1億5000万台になると思われる。その時、世界の環境汚染や石油資源消費量が1.5倍になれば、地球環境は人類の生存に不適になるかもしれない。中国やインドのPM2.5問題などを見れば、簡単に杞憂とは言えない。むしろ、そういう危惧が抱かれただけで、自動車産業は人類の敵にされてしまう可能性も低くない。すでに世界には自動車を目の敵にしている環境団体もたくさんある。 だから世界中の自動車メーカーは低公害と省資源に向けて不断の努力を続けて行かなくてはならないのだ。それは誰のためでもない。自分のためである。2015年に空前のスキャンダルを引き起こしたフォルクスワーゲンが糾弾される理由はまさにそこにある。彼らのみならず、全ての自動車メーカーの存続を危うくする行為である。