意外な二択に学びあり。『たばこと塩の博物館』。
東京都内の駅名を「あ」から五十音順に選出し、その駅の気になる店やスポットなどをぶらりと周っていく連載企画「東京五十音散策」。「き」は錦糸町へ。
「砂糖と塩」なら想像がつくけれど、「たばこと塩」? 首をかしげた君はぜひ、この博物館へ行ってみよう。 東京五十音散策 錦糸町④
錦糸町駅からスカイツリー方面へ。小さな運河が流れる『大横川親水公園』に面した、5階建ての建物が見える。ここ『たばこと塩の博物館』はかつて政府の「専売品」であった「たばこ」と「塩」の歴史と文化をテーマとする博物館だ。国の財源確保、安定供給など様々な理由から「専売品」であったこれら(たばこは1985年まで、塩は1997年まで専売)は、日本専売公社(現・JT)によって取り扱われていたんだとか。そんな同社により渋谷の公園通りに博物館が設立されたのが1978年のこと。それから所蔵品の拡大と、建物の老朽化を理由に、JTが所有する倉庫の一部をリニューアルした現在の錦糸町エリア(墨田区横川)に移転したのが2015年だ。
「かつてたばこの工場やマッチの工場があったこのエリアは、近代のたばこ産業にゆかりが深かったんです。また、たばこの風俗が描かれた当館が所蔵する江戸時代の浮世絵などには、隅田川エリアの方が所縁があるものも多いです。」
そう答えてくれたのは館の広報担当の袰地(ほろち)さん。取材日は特別に展示の案内をしてもらった。建物2階には「特別展示室」スペースと「塩」の常設展示室。「塩」の展示室でまず目につくのが岩塩の大きな塊(記事最初の写真を参照のほど)。中には実際に舐めてしまう人もいたんだとか。味はやはりしょっぱいらしい。真似しないように! 展示スペースは、なぜ動物に塩が必要なのかという解説パネルに始まり、世界や日本での塩作りや塩の科学的な側面に至るまで細かに展示され、”塩のように”濃ゆい充実ぶり。
3階には「たばこ」の常設展示室。メキシコのパレンケ遺跡(7世紀後半頃)の復元からはじまる。「たばこを吸う神」が描かれた、たばこと人の関わりを示す、現在確認できる最古の資料である。そんなたばこを利用する風習が大航海時代に世界に伝播する様子や、「パイプ」「葉巻/嗅ぎたばこ」「水たばこ」などのグッズの展示が総覧でき、見るだけで楽しい。もちろん、日本におけるたばこ文化の紹介も充実している。専売になる前(明治期)のたばこ商たちの「広告合戦」や、専売後の杉浦非水や和田誠などがデザインしたたばこパッケージなど、グラフィックデザインの原点を鑑賞できる。