「量子コンピューティング、米中欧政府が投資…韓国も人材確保急がれる」
「量子は暗号という戦略的問題に向け米中欧などで政府次元の投資がされ続けるでしょう。韓国も優秀人材を確保しなくてはなりません」。 量子コンピューティング分野の世界的碩学である米デューク大学電子コンピュータ工学科のキム・ジョンサン教授は15日、大成グループの金英薫(キム・ヨンフン)会長との対談でこのように話した。キム教授は常温量子コンピュータを開発した米国のスタートアップ、イオンキューの共同創業者で、前日に大成グループが主催したサイエンスフォーラム出席のため訪韓した。2015年に設立されたイオンキューは量子コンピューティングのスタートアップとしては初めて2021年にニューヨーク証券市場に上場した。この日の対談でエネルギー専門家である金会長は「今後世界市場の主導権は量子コンピューティング技術確保の有無により変わるだろう。エネルギー側では量子コンピューティングのトリクルダウン効果でまた別の産業革命が起きるかもしれない」と話した。 量子コンピュータは0と1を別々に認識する一般のコンピュータとは違い、0と1が重なった「キュビット」に基づいて作動する。理論的にはスーパーコンピュータより30兆倍以上、一般コンピュータより1京倍以上速い演算が可能だ。グーグルは2019年にスーパーコンピュータで1万年かかる計算を自社の量子コンピュータである「シカモア」が3分ほどで解いたと発表した。量子コンピューティングは既存の暗号を解くことができる点で国家安全保障と直結しており、米国と中国が先を争ってこの分野に莫大な投資をしている。 2人の専門家は韓国が量子技術人材を確保してまだ市場が形成されていない応用分野で機会を見いだすべきと提言した。キム教授は「結局人材の争い。時間と投資が多く必要なハードウエアと違い、応用ソフトウエアは天才のような人が出てきて方法論を一気に見つけることができる」と話した。金会長も「韓国はソフトウエア側で寄与できるだろう」と話した。キム教授は米国と欧州などで最近量子コンピュータ関連のスタートアップが数百社誕生した事実に言及し、韓国でも多様なアイデアが集まるシステムが備われば革新できると楽観した。 現在の半導体で広がっている米中覇権競争の中心は今後量子コンピューティングにシフトする見通しだ。米国は1995年から量子技術に投資しており、2018年には戦略技術に指定して量子法を制定、4年間で12億ドル投じた。中国は2013年に国家技術に含め、2016年に100億元を投資する10カ年研究開発計画を立てたのに続き2018年にも5年間で1000億元を支援することにした。IBMとグーグル、マイクロソフトなどビッグテックとスタートアップなど民間が革新技術発展を主導する米国と、国が先端技術開発を主導し産業を育成する中国の対決だ。2019年に関連分野の本格投資に出た韓国は昨年に「2035年までに3兆ウォンを投入し、先導国技術水準の85%を達成する」という国家戦略を出した。 金会長は「原子爆弾と量子コンピューティング開発は似たところがあり、どちらか一方も退くことはできない大きな争いが広がっている。中国はマンハッタンプロジェクト(第2次世界大戦当時米国が核兵器開発ために進めた秘密計画)のような体系を備え人材をかき集めて開発に乗り出しており、米国は民間に開放して開発中」と話した。キム教授は「米国では量子技術が国家競争力にどれだけ大きな影響を及ぼすのか政派を超えた共感がある。政権が変わっても量子技術開発を支援することに大きな変化はないだろう」と説明した。続けて最近量子コンピューティングを対中輸出統制に追加した米国も技術規制という垣根を設けるものの同盟国間で協力する戦略を取っているとし、韓国も米国と戦略的パートナー関係を結んでいき民間の革新を引っ張らなければならないと強調した。 キム教授は中国の先端技術分野に現れる3つの流れに注目した。▽欧米留学派の中国復帰▽研究の量的・質的跳躍▽研究装備国産化――だ。キム教授は「米国や欧州で活動した中国の多くの秀才が故国に戻るが、米国有数の大学の教授までも中国へ行くのは個人的事情のほか、中国の研究環境が良くなったため」と説明した。彼はまた「中国で出版する先端研究結果を見れば質と量でいずれも印象的」と話した。今年初めの香港紙サウス・チャイナ・モーニング・ポストの報道によると、2003~2022年の世界の量子特許出願の37%を中国が占めて米国の28%を上回った。キム教授は「レーザーシステムなど量子関連研究装備を中国が直接生産する能力も備えている」と伝えた。 キム教授は量子コンピュータ商用化次期について「装備製造技術を備えるには2~3年あれば良く、応用事例も2030年までに出てくる可能性が大きい。国防と医療など専門分野から始まり応用分野が広くなるだろう」と予想する。金会長は「原子力が未来エネルギーの『ブリッジ』の役割をするように、量子コンピューティングを通じてエネルギーが節約されれば余裕を持って新しいエネルギーを探すことができるだろう」と期待した。