大人の近視 ~成人が知っておくべき目の病気~【100歳まで見える目】
◇網膜剥離になったら緊急手術!
「さて、今から入院手術を行いましょう」。網膜剥離の診断が下ると、緊急手術が組まれます。というのも、網膜が剥がれ出して中心の黄斑まで及んでしまうと、視力が元通りにならなかったり、視力が1.0でもひどく歪んで見えたりするという後遺症が出ることがあるからです。黄斑が剥がれるまでに手術を急ぐ、そのための緊急手術になります。 目の病気にも幾つか緊急性の高いものが存在し、網膜剥離はその代表格の一つです。 網膜剥離は40代ごろから生じてきます。手術は硝子体手術を行います。これは、目の内側から引っ張っている硝子体を切除し、網膜の下に溜まっている水を抜き、孔の周りをレーザー治療で固めます。網膜がくっつく(復位する)率は90%以上ですが、やはり剥がれる前に治療する方が負担が少ないです。 そのための健診が重要です。また、網膜の端が薄くなる体質の方は少ない頻度ですが、10~30代でも網膜剥離が生じることがあります。その際は硝子体の変化が少ないので、目の外からシリコンのバンドを巻く強膜内陥術という術式を行います。
◇強度近視の落とし穴ー緑内障検診で見落とされがち
【緑内障】緑内障は日本の失明原因の1位であり、40歳以上の5%に存在するとされますが、近視があるとさらになりやすいとされます。緑内障は網膜の一部の神経がやせて薄くなっていき、その部分の視野が欠けていく病気です。 まず緑内障があるかどうかを判定するには、視神経乳頭という神経の部位を確認します。近視が強くなると、視神経乳頭は本来の丸型から傾いて縦長の形に変わっていきます。この所見を乳頭傾斜と呼びます。緑内障があるかどうかの判断は視神経乳頭の中心の白い所(陥凹)が拡大することで判断するのですが、乳頭の傾斜のためこれを判断するのが大変に難しいです。 人間ドックや市民健診などでは、眼底写真を撮って緑内障の有無を確認してくれている場合があります。しかし、強度近視の方は乳頭傾斜のため眼底写真で判定することが難しく、判定不能になることが多いです。 精密検査で光干渉断層計という断層写真を撮ると確認できますが、これを受けるには眼科を受診する必要があります。まとめると、近視が強ければ緑内障の健診は一般健診では歯が立たず、眼科を受診して確認を受ける必要があるということです。