今や「賃上げ」こそが「物価」を押し上げる危険な原因に…「物価対策」の負担を国民に押し付ける政府の無策
オイルショックの教訓
1970年代のオイルショックの時、イギリスを始めとする諸国では、賃上げを求める労働組合の力が強く、高率の賃上げが行なわれた。 しかし、それが経済全体のインフレをさらに悪化させることになり、経済が危機的な状況に陥った。 この時日本は、賃上げを抑制し、それによってオイルショックを克服することができた。これは、労働組合が企業単位になっているため、「過大な賃上げを行なえば企業が沈没してしまう」という企業一家主義的な論理が働いたからだ。 企業一家の論理がいつも正しいわけではないのだが、この場合には、過大な賃上げを抑制するために、正しく働いたと考えることができる。 現在の事態を考える時、このときの教訓を思い出す必要がある。
野口 悠紀雄(一橋大学名誉教授)