終盤のVSCで大逆転。ウイリアムズ育成のオサリバンが15番手から初優勝。宮田莉朋も好ペース刻む/FIA F2第5戦モンテカルロ レース2
5月26日、2024年FIA F2第5戦モンテカルロのフィーチャーレース(決勝レース2)が行われ、ザク・オサリバン(ARTグランプリ/ウイリアムズ育成)がバーチャル・セーフティカー(VSC)導入の好機を掴み、FIA F2初優勝を飾った。宮田莉朋(ロダン・モータースポーツ/TGR WECチャレンジプログラム)は15位となった。 【写真】チェッカー後、チームと言葉を交わすハジャル。その表情は険しい フィーチャーレースのグリッドは24日に行われた公式予選で決定され、リチャード・フェルシュフォー(トライデント)が参戦4年目にして初ポールポジションを獲得。フロントロウ2番手にビクトール・マルタンス(ARTグランプリ/アルピーヌ育成)、2列目3番手にドライバーズランキング3位につけるアイザック・ハジャル(カンポス・レーシング/レッドブル育成)、4番手にランキング2位につけるポール・アーロン(ハイテック・パルスエイト)が続いた。 今大会のタイヤコンパウンドはプライムタイヤがソフト(レッド)、オプションタイヤがスーパーソフト(パープル)となるなか、ポールのフェルシュフォーを筆頭に上位8台を含む17台はスタートタイヤにプライムタイヤを選択している。 タイヤ交換義務を有する周回数42周で争われるフィーチャーレースは、快晴のもと、気温19度、路面温度23度というスプリントレースと比較してかなり低めのコンディションで幕を開けた。 前日のスプリントレースでもスタートで出遅れていたマルタンスだったが、またしてもスタートで大きく出遅れ一気に14番手まで後退。フェルシュフォーがトップを守るなか、マルタンスの後退により、ハジャルが2番手、アーロンが3番手に浮上する。 一方、ポイントリーダーで14番手からスタートしたゼイン・マローニ(ロダン・モータースポーツ/ザウバー育成)はオプションタイヤでのスタートを選択し、オープニングラップで12番手までポジションを上げる。しかし、狭いモナコ・モンテカルロなだけに、プライムタイヤのファン・マヌエル・コレア(ダムス・ルーカスオイル)を攻略できず周回が続いた。 なお、オープニングラップのターン6(ローズヘアピン)でジャック・クロフォード(ダムス・ルーカスオイル/アストンマーティン育成)とクッシュ・マイニ(インビクタ・レーシング/アルピーヌ育成)が接触し、クロフォードは早々にレースを終えることになった。 15周目にはオプションスタートのマローニがピットインし、16周目にエンツォ・フィッティパルディ(ファン・アメルスフォールト・レーシング)、17周目にオリバー・ベアマン(プレマ・レーシング/フェラーリ育成)と、オプションスタート勢がタイヤ交換義務を消化するタイミングを迎えた。 トップを守るフェルシュフォーは好ペース周回を重ね、18周目にはハジャルに4.1秒のギャップを築いていた。そんななか、19周目にフェルシュフォーのマシンが一瞬スローダウン。これでハジャルとのギャップは0.7秒まで縮まる。 22周目、上位勢では真っ先に3番手アーロン、5番手アンドレア・キミ・アントネッリ(プレマ・レーシング/メルセデス育成)がピットイン。アントネッリは作戦の異なるベアマンの眼前でコース復帰。アウトラップだったこともあり、チームメイトながらメルセデス育成とフェラーリ育成の見応えのあるサイド・バイ・サイドとなるが、ターン6(ローズヘアピン)でベアマンが先行する。 続く23周目に2番手ハジャル、24周目にフェルシュフォーがピットイン。しかし、ピットアウト後のフェルシュフォーをまたもマシントラブルが襲ったか、フェルシュフォーのペースが2秒ほど極端に落ち、26周目のホームストレートでハジャルがタイヤ交換組のトップに浮上する。 26周目にはアーロン、ベアマン、27周目にはアントネッリ、ボルトレートにかわされたフェルシュフォーは、シケインカットによる5秒のタイムペナルティも受けることとなりピットイン。ペナルティ消化後にタイヤを交換してコースに復帰するが、その際もマシンからは異音が出る状況であり、翌周にはリタイアを選択した。 これでタイヤ交換組のトップに浮上したハジャルの勝利は決まったかと思われた終盤、波乱は続いた。 40周目、ピットアウト直後のジョシュア・デュルクセン(AIXレーシング)がターン1を過ぎた先のホワイトラインを出たところでマローニに接触し、デュルクセンはターン4(カジノ)のエスケープにマシンを止めた。そんななかただ一台、未だピットに入っていなかった15番手スタートのオサリバンがピットに滑り込み、その直後にVSC導入が宣言されたことで、オサリバンはハジャルの1.8秒前というポジションでコース復帰を果たす。 オサリバンが41周目中盤を迎えたタイミングでVSC解除となると、ハジャルはアウトラップのオサリバンに積極的に仕掛けるが、タイヤが暖まったオサリバンはトップを死守。ハジャルは「これはジョークだろ?!」と興奮気味に無線を飛ばすが、カンポスのエンジニアは「これがモナコだ」と返した。 そのまま、前年のFIA F3ランキング2位のオサリバンがトップチェッカーを受け、FIA F2初優勝を飾った。今季3勝目となるはずだった勝利をVSCで失った2位のハジャルは怒りが収まらず、無線で怒りをぶつけた。3位にアーロンが入り、アーロンがポイントランキングトップに浮上した。 22番手スタートの宮田は、32周目に1分22秒878、さらに33周目には1分22秒597と好タイムを記録する。最終的にデニス・ハウガー(MPモータースポーツ)にファステストは奪われてしまったが、フィーチャーレースでは上位勢と遜色ない走りを見せることが叶った。 2024年FIA F2、次戦となる第6戦は約1カ月後の6月21~23日にスペイン・バルセロナのカタロニア・サーキットで開催される。宮田にとってカタロニア・サーキットは、4月に開催されたELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズ第1戦でデビューウインを飾った地でもあり、FIA F2インシーズンテストでも好走を見せたコースとなる。イモラ、モンテカルロと、未経験の地で苦戦が続いただけに、バルセロナでは悔しさを跳ね除ける走り、そして戦いぶりに期待したい。 ■2024年FIA F2第5戦モンテカルロ フィーチャーレース正式結果 Pos./No./Driver/Team/Time/Gap 1/2/Z.オサリバン/ARTグランプリ/1h00’25.696 2/20/I.ハジャル/カンポス・レーシング/0.580 3/17/P.アーロン/ハイテック・パルスエイト/8.058 4/3/O.ベアマン/プレマ・レーシング/9.118 5/8/J.コレア/ダムス・ルーカスオイル/9.586 6/11/D.ハウガー/MPモータースポーツ/9.945 7/4/A.アントネッリ/プレマ・レーシング/17.540 8/10/G.ボルトレート/インビクタ・レーシング/17.847 9/1/V.マルタンス/ARTグランプリ/18.021 10/5/Z.マローニ/ロダン・モータースポーツ/26.555 11/25/T.バーナード/AIXレーシング/26.983 12/14/E.フィッティパルディ/ファン・アメルスフォールト・レーシング/27.418 13/12/F.コラピント/MPモータースポーツ/30.218 14/21/J.マルティ/カンポス・レーシング/31.662 15/6/宮田莉朋/ロダン・モータースポーツ/32.386 16/23/R.スタネ/トライデント/33.309 17/9/K.マイニ/インビクタ・レーシング/33.796 18/24/J.デュルクセン/AIXレーシング/DNF -/22/R.フェルシュフォー/トライデント/DNF -/15/R.ヴィラゴメス/ファン・アメルスフォールト・レーシング/DNF -/16/A.コルデール/ハイテック・パルスエイト/DNF -/7/J.クロフォード/ダムス・ルーカスオイル/DNF ・ファステストラップ:#11 デニス・ハウガー(MPモータースポーツ) 1分22秒384(37/42) 145.819km/h [オートスポーツweb 2024年05月26日]