日本人祖先の「3系統説」、従来の定説に修正迫る ゲノム解析で進化人類学は「人類、日本人の本質」を探究
日本の進化人類学や分子人類学研究の第一人者である国立科学博物館館長の篠田謙一さんによると、1981年に人間のミトコンドリアDNAの全配列が解読された。その後DNAを増幅する技術「PCR法」ができるなどして20年が経過し、2001年に人間一人分の核DNAの全塩基配列が明らかになった。「次世代シーケンサー」と呼ばれる装置の登場で核DNAの解析を短時間で大量にできるようになり、2010年以降、進化人類学は新しい段階に入ったという。
時空を超えて人類、日本人の本質に迫る
篠田さんは日本人の成り立ちを探るために2018~22年に実施された「ヤポネシアゲノムプロジェクト」に主要メンバーとして参画し、日本人成立のシナリオを明らかにする数多くの研究成果を残している。ヤポネシアとはラテン語を組み合わせた造語で日本列島を表す。
今年1月に開かれた日本科学技術ジャーナリスト会議(JASTJ)主催の講演会(月例会)で篠原さんは「このプロジェクトで現代日本人につながるプロセスは弥生時代で止まっておらず古墳時代まで延びることが分かった」「縄文人のゲノムは全て読めているが本州の日本人では(平均)10%が縄文人の遺伝子で90%は弥生時代以降入ってきた遺伝子だ」などと説明した。
さらに「弥生時代にはたくさんの遺伝的変異を持った人たちがこの日本列島で暮らしていた。弥生人と言うが誰か1人をもって弥生人の代表とは言えない」と指摘。「日本人はどこから来たのかとよく言う。私も『我々はどこから来たのか』と自分の本のタイトルに書いたが、アフリカから来たことは分かっているので『日本人の成り立ち』と考える方がいい」と述べた。
さまざまな年代や地域で得られた試料のDNAを比較することが可能になり、出土された骨の形状の違いだけでは判別できなかった私たちの祖先の集団の移動や複雑な混血の経緯が分かってきた。日本人の成り立ちが、そして日本人のルーツは多様であることがはっきりしてきた。