「早く引退してマッドな何かになりたい」糸井重里73歳、コロナ禍の社長業で思うこと
糸井重里が考える「世間とのズレ」
糸井は、インタビュー記事で自己肯定感が低い人間だと述べたこともある。ならば齢(よわい)70を過ぎて、世間とのズレを感じることはないのだろうか。 「ズレているんじゃないかって、何歳のときでも思っていましたよ。流行からズレてるとか、新しぶってる人から見てズレてるっていうのは、もうずっとズレてて構わないんで。テレビに呼ばれたときに、『ナウなことだったら何でも知ってる糸井ちゃんがゲストです』って紹介されたりすると、『嘘だい』と思って(笑)。責任者になって確実性を増やしていこうっていうときに人はズレるんですよ。会社で『僕が見ていたら止めたな』っていう企画が動き出してて、見ていると『止めなくて良かったな』っていうことが混じるようになるんです。『面白そうだから』ってやったものに対して、『それは今違うからやめておけよ』って言う側に僕が立ったときに失敗するんですよ。そこはしょっちゅう自分を戒めてますね」 そんな糸井が、もし社会が流動化している2021年に20歳だったら、どうしていただろうか。
「自分より面白そうに見える人を探しますね。自分がつまんないと思ったら、もっと面白そうな人を探す。自分が面白いと思ったら、『ちっきしょう、あいつ、俺より面白そうだ』っていうやつを必死で探して、そいつのところに行くんじゃないですかね」 しかし、そういう若者がどんどんとオンラインサロンに吸収されているのが現状である。 「もったいない、『ほぼ日の學校』に来い(笑)。教えたがる大人じゃなくて、盗みたくなる大人に会えるといいね。教えたい大人は、教えること決まっているんだもん。発表用の材料を持っている人はセールスマンだよ。そうじゃなくて『付いてきたいんだったら来ればいい、見たいんだったら見ればいい』っていう人から僕は学んできたからね」
――― 糸井重里(いとい・しげさと) 1948年群馬県生まれ。群馬県立前橋高校卒業、法政大学文学部中退。コピーライター、作詞家、タレント、エッセイストとして活躍。1998年に「ほぼ日刊イトイ新聞」を開設。2016年12月、「株式会社東京糸井重里事務所」を「株式会社ほぼ日」に社名変更。73歳。 (取材・文/宗像明将)