無念の引退も上原博之厩舎で愛されたガストリック 新天地でも頑張れ!/新人記者のトレセン日記
【新人記者・栗栖歩乃花のトレセン日記】 先日まで上原博厩舎に所属していたガストリック(牡4)が屈腱炎再発のため引退しました。9月14日のケフェウスSがラストランとなったのです。上原博師は第一声で「2歳のときに東スポ杯で勝ってくれて。厩舎にいい夢を与えてくれた、素晴らしい馬でした」と回顧。デビューから引退にいたるまでを厩舎スタッフに取材をしたので、ここに書き記したいと思います。
1度目の診断、1年7か月ぶりの復帰
デビュー勝ちを果たし、続く東京スポーツ杯2歳Sで勝利。東スポ杯は出世レースといわれるだけに期待が高まりました。しかし「そのあとくらいに脚元がもやもやしてきたね。注意して調教を進めたけど、3戦目のホープフルSのときには、すでに痛かったと思うよ」と上原博師は当時を振り返ります。その後、検査を受けて屈腱炎と診断され、鳥取・大山ヒルズで1年以上かけて丁寧にケアをしてもらったそうです。 そのかいあって、美浦トレセンに帰厩することができました。「厳しいかと思ったけど、調教を進められるようになって。能力がある馬だね」と調整過程で能力の高さを再確認。復帰戦の関越S(7着=0秒8差)のレース後にも、「1年7か月ぶりにしてはよくやった」と結果を褒める上原博師の笑顔が忘れられません。 復帰2戦目のケフェウスSは「馬場が悪くて脚元にこたえたかな。体も大きい馬だし、負担がかかったと思う」と振り返ります。「レースが終わってじわじわ症状が進行していった。2回目だし、いい状態ではなかった」と再発の経緯も教えてくれました。「再発はどこかでするので、どこまで我慢してくれるか」。これが不治の病ともいわれる屈腱炎の怖さだったのです。
新たなステップへ…
普段の調教をつけていた平田助手は「最初に発症した少し上のあたりです。悔しい…。無念の思いのほうが強いです」と言葉が詰まります。担当厩務員の小田さんも「復活させてあげたかったけど、再発なのでなんとも難しかった」と。上原博師は「次戦が重賞の富士Sに決まっていただけに…」と悔しさをにじませましたが「乗馬としての第2の人生があるので。引退した馬にしてみれば、種馬に次ぐ幸せな人生なのでね」とガストリックの未来に期待を膨らませます。もちろん厩舎スタッフも同じ思い。平田助手は「本当に悔しいです。でも、誘導馬として頑張ってほしいです。背中もいいですし、強いパフォーマンスを見せた馬。セカンドキャリアで、またお客さんの前でもう一度姿を見せられたら。もうひと花咲かせてほしいですね」と話します。 こんなにも大切にされて愛されたガストリックは今、美浦の乗馬苑で元気に過ごしていました。「おとなしくて、かわいい子です」と業務課・主査の草薙さん。乗馬苑に来てわずかなのに、ここでもまた愛されていました。「誘導馬以外にもジュニアだったり競技大会、ジャンプの試合に出ることもあります」と乗馬にもさまざまな選択肢があることを教えてくれました。ここからまた、不治の病と向き合いながら、新たなステップに踏み出します。頑張れ! ガストリック。またどこかで会える日まで。
栗栖 歩乃花