<2.5次元の誘惑>リアリティーから生まれる共感 奥深いコスプレの世界を丁寧に描く 岡本英樹監督インタビュー
岡本監督自身もミリタリーマニアで、カメラが好きなどオタクであることから共感できるところがあった。オタクとしての“こだわり”を理解できることもあり、アニメでも“こだわり”を表現しようとした。
「ジャンルは違っても興味の持ち方は変わらないはずです。どこをリアルに表現するかが大切になってきます。マニアが見た時に『これは違う……』と感じると、冷めてしまいます。もちろん、アニメなのでウソもあるのですが、リアルな部分をしっかり描いていれば、見た人が冷めずに、共感してもらえるはずです。共感してもらえれば、作品を好きになる一つの大きなきっかけになると思います」
コスプレのリアルを表現するために、岡本監督は数々のコスプレイベントを訪れ、取材を重ねた。
「コスプレイベントの雰囲気、作法、取り巻く環境、カメラマンたちがどういう機材を使って、コスプレーヤーとどう向き合っているのか? コスプレーヤーやカメラマン以外の参加者はどういう目で見ているのか? そこをしっかり描くことができれば、リアリティーを表現できると思っていました。コスプレを撮影している際のカメラのシャッター音も録音しました。カメラは、メーカーや機種によってシャッター音が違いますし、聞く人によってはそれが分かります。例えば、キヤノンのカメラが描かれているのに、ソニーのシャッター音が鳴っていたら、知っている人は一瞬、うん?となります。分かる人には分かるんです。それではリアリティーが損なわれてしまいます。説明はしていませんが、そういう共感できるポイントを作ろうとしました」
奥の深い世界を表現するために、細部にこだわった。
「知らない人は、衣装を着て、メークして終わりだと思うかもしれませんが、違うんですよね。例えば、風が吹いても髪が崩れないようにどうしているのか? アニメの雰囲気を損なわずに立体化するのはどうしているのか? コスプレーヤーもカメラマンもアニメを見てくれるはずなので、その方たちが、がっかりするようなアニメにはしたくありません。コスプレもカメラも奥が深い世界です。原作がそこから逃げていないので、我々も逃げられません。コスプレの世界を知らない人は、沼にズブズブと浸かりやすいようにして、既にハマっている人にとっては心地よい温泉のように感じていただけるようにしたかったんです」