事前に情報? ISは関与? スリランカ連続テロ いくつかの注目点
250人以上が犠牲になったスリランカ連続爆破テロ。非常に大規模な今回の一連のテロについて、元公安調査庁東北公安調査局長で日本大学危機管理学部教授の安部川元伸氏に寄稿してもらいました。 【写真】「イスラム国」崩壊後もテロの脅威は続く
アジア起きた前代未聞のテロ事件
4月21日にスリランカのキリスト教会、高級ホテルで発生した大規模な連続爆弾テロから2週間以上が経過し、今まで未解明の謎が次々に明らかになってきました。このテロではなぜスリランカが狙われたのか、犯行主体は誰なのか、そして、4月23日にアマク通信を通じて出された「イスラム国」(IS)による犯行声明の真偽等について、スリランカ政府やマスコミから発表された情報により、ある程度事件の輪郭がつかめるようになりました。このアジアでは前代未聞のテロ事件について、注目すべき点がいくつかあります。
テロは予測されていた?
このテロが起きる前の4月初旬に、米国とインドの情報機関がスリランカでテロが起きるとの情報を入手し、事前情報としてスリランカ政府に提供していたといわれます。しかし、残念なことに、テロを警告する情報は政府内で握りつぶされてしまい、何らの対策も講じられないままに、最大都市コロンボほか各地で自爆テロが連続して発生してしまいました。標的になったのは、イースターの日曜礼拝が行われていたキリスト教会3か所、外国人が多く宿泊する高級ホテル3か所ほかで、日本人を含む253人が死亡し、500人以上が負傷しました。報道によれば3月にニュージーランド・クライストチャーチのイスラム・モスクが白人至上主義者に銃撃され50人が死亡した事件に対する報復のために敢行されたともいわれています。 外国政府から事前にテロの不穏情報が提供され、標的についても示唆されていたにもかかわらず、みすみすテロ攻撃を許し、多くの市民が殺害されたことは、悔やんでも悔やみきれないものがあるでしょう。なぜこのようなことになったのでしょうか。スリランカ政府はこのことにあまり触れたがらないようですが、米国等の報道によれば、スリランカ政府内に内紛があり、シリセナ大統領とウィクラマシンハ首相の関係が悪化しているために貴重な情報が政府内で共有されず、結局テロが発生し、多くの人が犠牲になりました。このような大規模テロは、9.11米国同時多発テロ以来のことですし、その際に米国の情報機関が犯した大失態が、再びスリランカで繰り返されることになりました。