事前に情報? ISは関与? スリランカ連続テロ いくつかの注目点
ISなど過激派が新たな手法で各国に拠点?
インドは、上記のようにガンジー元首相が殺害され、南部のタミル・ナドゥ州はタミル人の出身地であるだけに、LTTEの支持者も多く居住しています。したがって、インドとスリランカの過激派の動きは連動していると考えられます。実際、今回のテロ情報の発端は、インド機関がインドでIS関係者を逮捕した際、同容疑者がNTJのリーダーにテロ訓練を施した事実、さらにスリランカでの爆弾テロ計画の情報を聞き出し、これがスリランカ政府に提供されたものといわれています。 このテロにLTTEが組織として直接関わったとは考えられませんが、最盛期のLTTEは、メンバー及び支援者を世界中に分散させ、海外でみやげ物屋や民族料理レストランなどを営むほか、映画の上映などによる寄付金集めが巧みであり、多額の収益をスリランカの組織に送金していました。そのタミル人コミュニティは、現在も欧州、カナダ、米国、マレーシア、シンガポール、豪州、そして日本にも存在していますが、海外のタミル人は、非常に人懐こく穏健で、現地とトラブルを起こすような過激な側面はみられません。しかし、ISなどのイスラム過激派が新たな手法で各国に拠点を構築し、テロ攻撃を行う計画があるとしたら、各国とも過激派の動きを十分に警戒し、有効な対策を講じる必要があるでしょう。
---------------------------------------------- ■安部川元伸(あべかわ・もとのぶ) 神奈川県出身。1975年上智大学卒業後、76年に公安調査庁に入庁。本庁勤務時代は、主に国際渉外業務と国際テロを担当し、9.11米国同時多発テロ、北海道洞爺湖サミットの情報収集・分析業務で陣頭指揮を執った。07年から国際調査企画官、公安調査管理官、調査第二部第二課長、東北公安調査局長を歴任し、13年3月定年退職。16年から日本大学教授。著書「国際テロリズム101問」(立花書房)、同改訂、同第二版、「国際テロリズムハンドブック」(立花書房)、「国際テロリズム その戦術と実態から抑止まで」(原書房)