松山英樹の歓喜、シェフラーの涙… やっぱりオリンピックは“特別”だった
「パリ五輪」3日目のプレーを終えた松山英樹がパッティンググリーンの片隅で練習していた。すでに最終日に向けてコーススタッフが芝を刈り、カップを切り直して準備を進めている時間帯。ほかに選手の姿はなかった。 【画像】山下美夢有は号泣 3打差4位で迎えるラスト18ホールへ、やれることは全てやっておく――。常に100%の準備で試合に臨む松山だが、このオリンピックに懸ける姿勢は鬼気迫るものがあった。最終盤まで金メダルの可能性を残す激闘の末につかんだ銅メダルへの喜びようも、その重みを物語っていた。
金メダルを獲得したスコッティ・シェフラー(米国)は、国歌斉唱で大きな背中を少し丸めて泣いた。大会2勝目を挙げた4月「マスターズ」はひっそりとトイレで涙を流したという。今季だけでも数々の栄冠を手にしてきた世界ランキング1位が、表彰台の真ん中で人目もはばからず感極まっていた。
2016年リオデジャネイロからの3大会で金、銀、銅の3色をそろえ、ゴルフ史上初の“メダルスラム”を達成したリディア・コー(ニュージーランド)の涙には、キャリアの幕引きが近いことを予感させる雰囲気すらあった。それほどの充実感があふれていたからだ。メダルに1打及ばなかった山下美夢有も、気丈に取材対応を終えた後で悔し涙が止まらなかった。
歴史の積み重ねと権威においてゴルフ界で圧倒的なメジャーとの価値を比較され、112年ぶりの復活だったリオでは過密日程や現地の衛生環境もあって男子を中心にトップ選手の出場辞退が相次いだ。
見えてきた五輪ゴルフの価値
しかし、コロナ禍で無観客開催だった3年前の東京を経てパリに乗り込んだ日本勢も海外勢も、この舞台に対してどこまでも本気だった。母国を背負って戦うオリンピックが彼らにとっても特別であることを目の当たりにし、再三問われてきたゴルフが五輪競技である意味について、個人的には“答え”が出た感じもある。 2028年ロサンゼルス五輪に向け、国際ゴルフ連盟(IGF)は国際オリンピック委員会(IOC)に対して男女混合団体戦の導入を提案している。柔道でもフランスと日本が決勝でぶつかった混合チーム戦が大いに盛り上がったように、一層ナショナリズムを刺激して“特別感”を演出する手法にはなり得る。