補選3敗で「解散」戦略に狂い…「岸田おろし」すぐには起きず?
衆議院の3つの補欠選挙が全敗に終わったことで岸田首相の政権運営はさらに厳しさを増し、今の国会中の衆議院の解散・総選挙は難しくなったとみられている。一方で自民党内ではすぐには「岸田おろし」は起きないとの声が強い。なぜなのか?“補選全敗”の岸田政権への影響を分析・解説する。 【図解】支持率低迷 石破“幹事長”に期待も ◇ 28日に投開票が行われた衆議院の3つの補欠選挙は2つの不戦敗を含め自民党の3敗・全敗に終わった。 保守王国で自民党の牙城として知られる島根でも党の公認候補が敗れたことで岸田首相の政権運営はますます厳しさを増し、自民党内からは「今の国会中の衆議院の解散・総選挙は相当難しくなった」といった声や「岸田首相がトップのままでは衆議院選挙はとても戦えない」との声が上がっている。 特に選挙戦最終日の27日土曜日に岸田首相が周囲に慎重な意見があるのを押し切る形で島根に二度目の応援に入りながら敗れたことは、今後、首相の求心力低下につながる可能性もありそうだ。 さらに、岸田首相と距離があるいわゆる非主流派の議員からは「岸田おろしの動きが始まる」、「政局含みの展開になる」との声も上がっている。 ただ、自民党内ではすぐには「岸田おろし」の動きは起こらないだろうとみている党幹部や議員が多い。なぜなのか? 理由として大きく4つ挙げられる。 1:選挙期間中から劣勢が伝えられ全敗は既に織り込み済みだったから 2:自民党全体の責任で党内でガタガタしている余裕すらないから 3:大型連休に入り岸田首相がフランス・ブラジルなどを訪問し、野党が国会などで追及することがないから 4:非主流派側も「岸田おろし」の主戦場は今ではなく9月までにある自民党総裁選だと判断しているから とは言え、この苦境を岸田首相はどうやって打開していくのか。 首相の側近議員や政権幹部らが必要だと指摘しているのが、「補選敗北の責任を明確にし局面を打開するための党役員人事」というものだ。 複数の自民党議員が「補選全敗したのに幹事長が責任を取らないのはあり得ない」と指摘していて、具体的には茂木幹事長の責任問題が浮上すると言われている。 一方、立憲民主党は補選3戦全勝の勢いに乗って岸田政権への攻勢を強め、岸田首相のままで早期の解散総選挙に追い込みたい考えだ。 こうした中、後半国会の最大のポイントとなっているのが、自民党の裏金事件を受けて議論されている政治資金規正法の改正を実現できるかという点だ。 岸田首相の側近議員は「政治資金規正法改正に向けた首相の決意は相当固い」と語っているが、立憲民主党を中心とした野党が補選の勝利で強気に出てくる中、自民党主導で法改正を実現できるかは予断を許さない状況となっている。 6月23日の会期末前には野党側が内閣不信任案を出すことも考えられる。 ある自民党幹部は「終盤国会は政治資金規正法の成立と引き換えにした内閣退陣や、不信任案が引き金となっての解散・総選挙すらありうる」との見方を示しており、緊迫した展開も予想される。