アーセナル、18歳のルイス・スケリーは何者か。予想外の先発抜擢、ティアニーよりも優先された理由は?【欧州CL分析コラム】
UEFAチャンピオンズリーグ(CL)リーグフェーズ第6節、アーセナル対ASモナコが現地時間11日に行われ、3-0でホームチームが勝利を収めた。現在アーセナルは怪我人が続出しており、その中で注目を集めたのが左SBの人選だ。なぜ、アルテタ監督は経験豊富なティアニーではなく、18歳のルイス・スケリーを起用したのだろうか。(文:安洋一郎) 【動画】アーセナル対モナコ ハイライト
●アーセナルがモナコに3-0の快勝 ほぼ最終ラインが固定されていた昨季とは打って変わって、今季のアーセナルは怪我人に悩まされている。 先週末の試合ではベン・ホワイトとガブリエウ・マガリャンイス、冨安健洋、オレクサンドル・ジンチェンコ、リッカルド・カラフィオーリが出場できず、今週火曜日のトレーニングでは彼らに加えて、ユリエン・ティンバーとトーマス・パーティーも練習参加できなかったと報じられていた。 結果的にティンバーとトーマスはモナコ戦に間に合ったが、前者はコンディション不良の影響からか先発メンバーから外れている。 この時点で指揮官の中で左サイドバックに先発起用する選手は、アカデミー出身のマイルズ・ルイス=スケリーと今季出場がないキーラン・ティアニーの二択に絞られた。 これまでの実績や経験だけで見ると、27歳のスコットランド代表DFをスタメン起用するのが自然な流れだろう。怪我人続出の事態に、アルテタ監督自身も「ティアニーは試合に出場する準備ができている」と語っていたが、モナコ戦で先発に抜擢されたのはルイス・スケリーだった。 なぜ、指揮官はティアニーよりもトップチームで120分弱の出場時間しか得ていなかった18歳を優先的に起用したのだろうか。 ●ルイス・スケリーを先発起用した理由 その答えはシンプルにルイス・スケリーの方がチームの戦術にフィットしているからだ。 前提として、ティアニーは左SBに流動的なポジショニングが求められる戦術に変わってから大きく序列を落としており、構想外となった昨季はレアル・ソシエダへとローン移籍で放出されている。 特に中盤の一角に入ってのビルドアップやファイナルサードで攻撃を組み立てることを苦手としており、今のアーセナルで彼を左SB起用するのは適材適所とは言えないだろう。 一方のルイス・スケリーはMF登録の選手で、中盤に入ってのプレーを得意としている。モナコ戦でも対WGの守備で距離を詰め切れないシーンがあるなど、SBとしての守備対応には伸びしろを残しているが、少なくともティアニーよりはチームにプラスをもたらすことができる。 指揮官の起用に応えるように、この試合で先制点を呼び込んだのは、ルイス・スケリーの中央でのプレス回避と縦パスだった。 ●先制点を呼び込んだルイス・スケリーの真骨頂 右サイドのマルティン・ウーデゴールから左SBのルイス・スケリーにパスが通ると、モナコMFエリース・ベン・セギルが激しくプレッシャーを掛ける。 これを強引に剝がして前を向くと、オフサイドラインギリギリを抜け出したガブリエウ・ジェズスに縦パスを通し、彼の折り返しをブカヨ・サカが詰めてアーセナルが先制に成功した。 彼の真骨頂とも言える一連のプレーは、ティアニーには期待できないだろう。ルイス・スケリーの偽SBとしてのセンスは随所に見られており、24分にもジェズスへと斜めのクサビのパスを通して、ウーデゴールのシュートシーンを演出していた。 先制点を呼び込んだ18歳は、64分にティンバーと交代。その後2点が入り、アーセナルが3-0の勝利を収めたが、チームメイトが立て続けの決定機を逃しただけで、ルイス・スケリーが出場していた時間帯の方がビッグチャンスは作れている。 実際にゴール期待値は後半よりも前半の方が2倍ほど高い。これはチームとして得意とする右サイドからの攻撃に偏らなかったことが要因として大きく、それを演出したのはルイス・スケリーと左インサイドハーフで先発出場したミケル・メリーノの両名のお陰だろう。 ティンバーとデクラン・ライスを同じポジションで起用した際とは左サイドの流動性が雲泥の差で、左WGのガブリエウ・マルティネッリも攻撃面では窮屈なプレーが少なかった。 こうした事情を踏まえると、しばらく怪我人が戻ってこないのであれば、ルイス・スケリーとメリーノを同時起用し続けても面白いかもしれない。 負傷者が出ないことがベストではあるが、それが新たな才能が出てくるキッカケになることもある。ルイス・スケリーの台頭はまさに“怪我の功名“で、彼自身の守備対応が大きく改善されるようであれば一気にスタメンの座を掴んでも不思議ではない。 (文:安洋一郎)
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