2025年へ国内企業のIT投資が拡大基調、DXやAIは現場実践に--ITRのアナリスト陣が解説
IT市場調査やコンサルティングを行うアイ・ティ・アール(ITR)は、年次調査の最新版「国内IT投資動向調査報告書2025」を題材にした座談会を開催し、プリンシパル・アナリストの三浦竜樹氏、シニア・アナリストの水野慎也氏、同 入谷光浩氏が、2024年度の状況や2025年度の展望などについて解説した。 国内IT投資動向調査は、同社が2001年から毎年実施しており、24回目になる。国内企業でITの戦略や投資などの意思決定に関与する役職者を対象として8月18日~9月1日にヒアリングを行い、2374人が回答。座談会では、調査結果から「IT投資(予算)の方向性」「IT戦略での重要テーマ」「DXへの取り組み状況」「AIへの取り組み状況」「IT人員とデジタル人材の動向」「製品・サービス分野の投資意欲」の6つのトピックを取り上げた。 IT投資(予算)の方向性 前年度と比較したIT予算の増減は、「増額する」とした企業が2023年度、2024年度とも44%だったが、2025年度予想では1ポイント増の45%となった。また、増減割合に応じた数値を基に算出した「IT投資インデックス」は、2024年度が「3.81」で、過去最高だった2006年度の「3.88」に次ぐ水準となった。2024年度の業界別のIT投資インデックスは、金融・保険が「4.83」で最も高く、以下は建設・不動産で「4.12」、情報通信で「4.03」、「製造」で「3.98」などとなっている。 三浦氏、特に業界別のIT投資インデックスで建設・不動産が情報通信を上回った点が注目されると指摘した。背景にあるのは、建設・不動産業界における深刻な人手不足の状況で、水野氏によれば、実際に同業界の顧客企業からデジタル化やデジタルの活用に関する相談と助言の依頼が多いとのこと。コロナ禍の影響を大きく受け、人材不足に悩むサービス業界も同様の傾向だという。 また、全体としてIT投資を増やす傾向にあるが、回答企業の売上全体に占めるIT予算のうち新規投資で2023年度、2024年度とも0.9%、定常費用も2.0%、1.9%と大きな変化は見られなかった。入谷氏は、調査結果では断言できないものの、世界的な物価高に伴いIT支出も増加している可能性があると指摘した。