シリア旧反体制派、イスラエルとの対立回避目指す意向…「現段階で優先すべきは復興と安定」
【カイロ=田尾茂樹、エルサレム=福島利之】シリアの旧反体制派を主導する「シャーム解放機構」(HTS)指導者アフマド・アッシャラア氏は14日、アサド政権崩壊を機にシリアへの攻勢を強めるイスラエルとの「新たな紛争に突入することは許されない」と語り、対立回避を目指す意向を示した。 【写真】女性記者は防弾チョッキを着用していたが…頭部に銃撃受け死亡
旧反体制派系のシリアテレビのインタビューで述べた。アッシャラア氏は、イスラエルが「この地域での緊張激化を招いている」と批判しながらも、「シリアは長年の争いで疲弊しており、新たな紛争は許されない。現段階で優先すべきは復興と安定だ」と強調した。
一方、アサド前政権を支えてきたレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの指導者ナイム・カセム師は14日の演説で、シリアの新たな政権が「イスラエルを『敵』とみなすことを期待している」と述べた。
イスラエルによるシリアへの猛攻によって、ヒズボラは「補給路を失った」と明かしたが、「これは取るに足らないことで他の手段を見つける」と主張した。
在英のシリア人権監視団によると、イスラエル軍は14日夜から15日朝にかけてシリアの首都ダマスカス近郊などを約60回空爆した。アサド政権崩壊後、空爆は計446回に上るという。
軍はシリア領内の緩衝地帯などでの駐留も続ける。イスラエル・カッツ国防相は13日、国境地帯のヘルモン山での越冬準備を軍に命じた。シリア最高峰のヘルモン山は、イスラエルにとってシリア領内を奥深くまで監視できる重要拠点で、シリアに新政権が樹立されても、軍が駐留を続けるとの観測も出ている。
ヘルツィ・ハレビ軍参謀総長は13日、占領地のゴラン高原で兵士を前に「我々がここにいる主な理由は安全保障のため。シリアで起きていることに介入せず、シリアを管理する意図もない」と述べた。
「宗派偏らない政府」要望 米欧・中東諸国が共同声明
【ワシントン=冨山優介】米国務省は14日、アサド政権が崩壊したシリアの暫定政権に対し、「宗派に偏らない包摂的な政府」の樹立を求める共同声明を欧州や中東諸国とともに発表した。「国民が希望に満ち、安全で平和な未来を築けるよう全面的に支援する」としている。