ライディングの“先生”をバイクに装着! QSTARZ(キュースターズ)で走りを磨こう!!
スマホで基本的な分析とデータ管理が可能
ラップタイマーとしての機能だけでもLT-8000GTは素晴らしいのだが、これだけでは“先生”と崇めるほどのスゴさではない。この製品は、バイクを降りてからできること(得られるもの)が多く、だからこそライディングの上達に役立つのだ。 まず、本体はBluetoothおよびWi-Fiにより手持ちのスマートフォンと接続でき、専用アプリの「QRacing APP」をダウンロードしておけば、走行によって得られたデータをサーキットのパドックでも簡単に転送できる。 アプリでは、走行したセッションごとに情報が保存され、各セッションにおける周回ごとのラップタイムや最高速&最低速などがチェックできる。さらに、任意周回の走行ラインや速度推移(加減速)グラフを表示したり、基準ラップと見比べたり、動画モードで自車位置を動かしてアニメーションとして比較することなども可能。異なるセッションあるいは日付のラップとも比べられるので、例えば「今日は調子が悪いなあ……」なんてときに、前回のベストラップとの違いを見つけるのにも役立つ。
Windows PCがあれば、より詳しく解析できる!!
スマホひとつでかなりのことができるのがLT-8000GTの特徴だが、Windows PCとLT-8000GT本体をUSBタイプCで接続して、「QRacing PC」ソフトに走行ログをダウンロードすれば、より詳細に走りを分析できる。 スマホアプリと比べて他のセッションからラップデータを選択するのが簡単で、3つのラップを比べることができ、セクターを区切るビーコンを任意の位置に設定可能。ビーコンの設定間隔に縛りはないので、例えば「最終コーナーの進入から出口までのタイムを比べたい」なんてこともできる。 さらに、キュースターズを使用している他のライダーからデータをもらってインポートすることもできるので、仲間同士で走りを比べることまで可能なのだ。
計測だけでなく、分析することで上達につなげよう
LT-8000GTには、本当に多くの魅力があるが、従来型から大きく進化したポイントについて、キュースターズの日本営業課長を務める陳建宇さんは、「まず大きいのは、0.04秒ごとのログにより、これまで以上に詳細で正確なデータが得られるようになったこと」と話す。また、「スマホとの連携を強化したのも大きなポイント」と陳さん。ただし、「やっぱり分析に関しては、PCを使ってもらうことが前提。スマホはサーキットで走行直後にデータを見たいとき、PCは自宅などでじっくり走りを分析したいときなど、うまく使い分けてもらえたらうれしいです」とのことだ。 では、分析は何をどうすればいいのか? ファンライド層にはじつはこれが難しい。とはいえ、近年のスポーツバイクで主流となっている大排気量クラスのオーナーなら、まず気にしたいのがコーナーのボトム速度(最低速度)。このクラスは、コーナーをコンパクトに旋回して早めにフルバンクに近い状態から脱し、大排気量車ならではのパワーを活かして立ち上がり加速を重視する走りが主流。「コーナーの立ち上がりでアウトにはらんでしまい、スロットルをなかなか開けられない……」なんて場合、コーナーのボトム速度に注目してみたい。 また、しっかり速度を落としてコーナーを旋回できると、早めにスロットルを開けられるので加速は鋭くなり、直後に長めのストレートがある場合、ブレーキングポイントが同じならエンド付近での速度が伸びるはず。この結果、スマホやPCで見られる速度推移のグラフは、加速を示す右肩上がりの線がより急角度になり、頂点も高くなる。まずはこのあたりに着目しつつ、次のステップとしてブレーキングポイントや減速時間なども分析して、走りの精度を高めていきたい。 ちなみに、LT-8000GTの有効活用による上達の近道があるとすれば、同じコースで同じようなマシンに乗る、自分よりも上手な(速い)ライダーのデータを手に入れて参考にすること。プロのライダーではない仲間に言葉でライディングを教えてもらうのは、抵抗があったり信用できなかったりするかもしれないが、データなら納得できるかも……。 まあそうでなくても、タイヤの銘柄やサスペンションのセッティングを変更したときや、自分で走りを工夫して特定コーナーのライン取りやギヤ選択を意識的に変えてみたときに、どちらのほうが速いのかをデータで比べられるのは楽しいし、セクターを区切って分析できるから正しい判断もできる。そしてそもそも、データを分析して自分の走りを磨くなんて、MotoGPライダーみたいでなんだかとてもカッコいい! LT-8000GTは独立型の「GPSリアルラップタイマー」とされているが、実際のところは「データロガー」としても秀逸で、自分の走りを可視化してライディングを教えてくれるコーチのような存在であるのだ。
田宮徹