トム・クルーズも乗り回す空飛ぶ「スポーツカー」ホンダジェットの機内は想像以上に静かだった 〝ゲームチェンジャー〟と期待する新型機の性能とは
今年1月末時点で、2015年12月の初納入から約8年かけて250機の機体引き渡しを終えた。5年ほど前、日本で「空を自由に走るスポーツカー」としてホンダジェットのCMが流れたことがあった。自動車レース最高峰のF1をはじめとする四輪車、二輪車、人型ロボット「ASIMO(アシモ)」などに続き、ホンダジェットもホンダの代名詞になりつつある。 ▽米大陸を無給油で横断 現行機の価格は約700万ドル(約10億円)。もっとも一般に航空機事業は機体販売だけの収益化は難しいとされ、ホンダも事業自体は赤字が続く。試乗した日の午後、取材に応じてくれた「ホンダ エアクラフト カンパニー」の山崎英人社長は事業の赤字を「非常に大きな課題」と語った。ただ「きょう乗ってもらった機体には最高、最高、最高の技術を載せている」と言葉を重ねて完成度の高さを強調。納入増に伴い整備といった機体サービスの収益も増えてきているとし、今後の黒字化転換に自信ものぞかせる。
そんな山崎社長が「ゲームチェンジャー」と呼び期待を寄せるのが、2028年の導入を目指し開発中の新型機「ホンダジェット エシュロン」だ。 現行のエリート2までは機体の大きさが「ベリーライトジェット」と呼ばれるクラスだが、エシュロンは一つ上の「ライトジェット」クラスとなり、乗客乗員は3人増えて最大11人乗りとなる。航続距離も4800キロ超と大幅に伸ばし、ライトジェット機として初めて米大陸を無給油で横断できるよう開発を進めている。 山崎社長は、エシュロンについて「胴体を少し卵状にしつつ、横幅も広げている。肩や足もリラックスできるように工夫している」と語る。2022年の社長就任までは四輪車事業に関わることが多かったとし「内装の造り方、利便性、快適性というところにホンダは強みを持っている」と話す。 施設内に展示してあるエシュロンの胴体模型の内部に入ってみた。確かにエリート2より縦にも横にも少しゆったりとしている。座席数が三つ増えただけなのに内部は思った以上に広く感じた。
富裕層や企業幹部らが使うビジネスジェット市場で、ベリーライトジェット機の年間販売は60機程度。一方、ライトジェット機は年間約170機と市場規模が大きい。現行機に加えて、新型機は年間40機程度の生産を目指す方針だ。「エシュロンの導入で一気に状況が変わる」。山崎社長は事業の飛躍を見据え、こう力を込めた。