「警察庁潜入は簡単だった」 国松警察庁長官狙撃事件を自白した秘密工作員の語った犯行の驚くべき一部始終
ついに決行当日に
《長官公用車の変更に加え、警察官と思しき人間の突然の来訪。これらの異変から、私は警備体制が厳重なものに強化されたと受け止め、その日の決行を中止したのです。あらためて、武装強化するため、貸金庫に出向き、KG-9短機関銃も取り出し、用意しました。これは厳戒体制の警備員たちと銃撃戦など不測の事態が起こることも想定し、それに対応するため、準備したものでした。これらの武器は決行の時まで、当時、JR神田駅界隈(かいわい)に事務所を借りていたハヤシの方で保管してもらいました。 新しい決行日を3月30日とし、再びアクロシティに赴くことになりました。 その日は朝から小雨が降っていました。私は朝6時台に、当時、アジトにしていた小平市内のコーポ(筆者註・「服部知高」という偽名で、81年5月頃から96年11月頃まで居住)を出発。バスでJR国分寺駅に行き、東京行きの中央線特別快速に乗車しました。新宿駅で山手線外回りに乗り換え、JR西日暮里駅で下車。駅の北側路地で、軽自動車で来ていたハヤシと合流し、車で道灌(どうかん)山通り、明治通り、千住間道を通って、現場に向かいました。すぐ近くの都立荒川工業高校西側の、神社付近の路地で、銃器類の入ったショルダーバッグを持って、私は降車。アクロシティに到着したのは、朝8時すぎでした。小雨が降る中、まず、Bポート北東角に潜み、長官公用車を待ちました。私が下車すると、ハヤシは軽自動車で、千住間道沿いのNTT荒川支店に移動。その駐車場内で待機状態に入りました。 ちなみに、この日の私の出で立ちは、メガネをかけ、白マスクをし、ふちのある灰緑色の柔らかい生地の登山帽を被っていました。手には、薄手の綿糸を肌色に染めた特殊な手袋をつけていたので、遠目には素手に見えたでしょう。靴はビジネス靴のような黒いウォーキング・シューズを履いていました。服装は、艶消しの黒いスーツにネクタイを着用。その上に濃紺色のコートをはおって、狙撃に臨んだのです》