専門家が「専門外」についても語る社会は健全か 「数値を出さなきゃ意味がない」が逃す利得
■研究者の能力を世の中に還元するために そもそも研究者が有する能力には、特別な観察力、分析力、表現力が含まれる。論文やエビデンスの産出のために思考し、少なくとも一般人よりは精緻に仮説や主張を打ち出すことができるだけのトレーニングを、研究者は日々行っている。そういった意味で研究者は「知」の専門家なのであり、分野をとやかく区切るのみならず広いスコープをもってよい。研究者は素人に専門知を供出してくれる「専門知の自販機」なのでなく、知そのものの専門家だとして、社会でもリスペクトされるようになってほしいと願う。
これは別に研究者の言うことなら正しいと思えということではなく、専門が狭くなりすぎた研究者が少しでも世の中で役立つ機会を増やせるように、という思いからの提案でもある。ファミレスのうなぎが駄目だと言うよりも、旨いうなぎ屋は中華料理を作らせても美味しいんだよ、と言えるほうがはるかに建設的ではないだろうか。
舟津 昌平 :経営学者、東京大学大学院経済学研究科講師