人気予備校講師が「この本、むっちゃ面白いから毎日気晴らしに少しずつ読んでるんだけど、一番驚くのが700ページ超で本体2000円。今の時代にこれは価格破壊なのでは?」と投稿しSNSで大反響となった一冊とは?
娘に読み聞かせる
目次をパッと見てそのとき気になったところを読むスタイルです。例えば先ほどは第8章の『シャチの高度な戦略』を読んでいました。地元の名古屋グランパスを応援しているからです(grampusは英語で「シャチ」)。 そうそう、今年2歳になる娘がこの本の表紙を気に入ったみたいで『よむ! よむ!』とせがんできます。娘はアリが好きなようで,公園でアリを見つけては『ありしゃん! ありしゃん!』とはしゃぎ、最後は『ばいばーい!』と手を振っています。 第2章にはグンタイアリに関するさまざまな記述があって、公園でのほのぼのシーンとは程遠いのですが、娘に読み聞かせをしました。絵本とはリズムが違う文章が面白かったのか、その後も何度も『よむ! よむ!』攻撃が来るので、そういうときはパッと開いたところを一緒に読んでいます。 読書好きな人になってほしいので何かを読んで欲しがっているときはどれだけ忙しくても対応するようにしています。 神妙な顔つきで聞き入っていることもあれば、すぐに走り去ってしまうこともあります。
ペットを欲しがったゴリラ
娘と読むために適当に開いて読んだ中で特に印象的だったのは、第9章『罪を猫になすりつけたゴリラ』です。 人間と手話でコミュニケーションを取れるココという名前のゴリラの話で、ぬいぐるみでは満足できずにペットをほしがったというのがまず驚きでした。その子を大切に可愛がっていたのに、ある日、部屋の流し台を壊してしまったことをトレーナーに叱責されたら『猫がやった』と手話で回答した、そんなお話です。
原著と読み比べる楽しみ
――最初から順番に読んでいくのではなく、ランダムに読んでいるのですね。 田中:ですね。700ページ以上ある本を通読しようと思ったら大変ですから、つまみ食いするように読んでいます。どのエピソードも短くまとまっていて、これだったら仕事や育児の合間に少しずつ楽しむことができます。どの話も『ええっ?』『マジで?』『えぐい……』と語彙力を失う面白さがあります。 ところで、私は『世界が広がる英文読解』(岩波ジュニア新書)にも書いたのですが、翻訳書とその原書を読み比べるのが好きで…… ――え、それは面白い試みですね。 田中:はい。日本語と英語のちがいを知ることができて面白いですし、翻訳者さんの賢さというか、技術に触れて勉強になるので実践しています。 あとは、純粋に暇つぶしにもなります。それで『動物のひみつ』の原書も買ってみたんですけど、ひとつ気になることがあるので伺ってもいいですか? ――はい、なんでしょうか。 田中:日本語版の目次には詳細な小見出しがあるのですが、英語版にはありませんよね? これって日本語版のオリジナルですか? ――そうです。翻訳版のオリジナルです。 田中:いやあ、これは大発明というか、素晴らしいお仕事ですよ。これのおかげで私がやっているような『つまみ食い』的な読書ができているわけですから。 本当に、このオリジナル要素には拍手喝采、万歳三唱ですよ! 最初に触れた価格もそうですし、ページ数の割には軽くて開きやすいところなど、編集者さんをはじめ本の製作に関わっているすべての人がそれぞれの持ち場でファインプレーを連発して完成した、そんな作品だと思います。 *** 田中健一(たなか・けんいち) 大手予備校英語科講師。1976年愛知県生まれ。愛知県立明和高等学校、大阪大学文学部(西洋史)卒業。名古屋大学文学部(言語学)中退。著書に『世界が広がる英文読解』『英文法基礎10題ドリル』などがある。近年ではX(旧Twitter)やnoteで英語を中心に幅広く勉強に関するコンテンツを提供している。 (X、note ) 協力:ダイヤモンド社 ダイヤモンド社 Book Bang編集部 新潮社
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