パリで輝く日本人デザイナー:大森美希のランウェイデビューと教育への情熱
ー多様性の推進が進んでいるのですね。 ファッションウィークでは、多様性が非常に重要な要素となっています。たとえば、昨年のボス(BOSS)のショーでは渡辺直美さんが出演しましたし、バレンシアガのデザイナーであるデムナ・ヴァザリアは自身の家族や同僚、ジャーナリストなど、多様な人々をショーに起用しました。 これらの変化を見て、「身長が小さくても、いつかショーを歩けるかもしれない」と思うようになりました。私自身、小さい頃にモデルになりたいと思っていた時期がありましたが、20年前なら決して考えられないことでした。しかし最近では、「自分にもチャンスがあるかも」と思えるようになったんです。 そんななか、リック・オウエンスが学生と教師をモデルとして探しているという話を聞きました。前回のメンズでは身長制限で断念しましたが、今回は身長の指定がなかったのです。結果的に、ウィメンズでは多様な人々が起用され、私も「多様性枠」で参加できました。 この20年間でファッション業界の多様化は驚くほど進みました。53歳のアジア人で身長150cmという私が、パリファッションウィークという世界最高峰の舞台でモデルを務めることができたのは、その証しです。
日本とはまったく異なるファッション教育
ー教育者としてパリで活躍している日本人はほぼいないといいます。なぜこちらの道に進まれたのでしょうか。 20年間デザイナーとして第一線で働いてきましたが、そろそろ次世代を育てる時期だと考えるようになりました。きっかけは、ニューヨークからパリに戻ったタイミングでコロナ禍になり、転職に苦戦したことです。面接がすべてストップしてしまい、教育の道を選びました。 もともと教えることが好きで、日本でも教えた経験があります。定年後に教育のほうへ進もうとしていた計画が、少し早まった形ですね。当初は臨時的な仕事のつもりでしたが、予想以上に面白く、今も続けています。もう3年になりますね。