正体不明のグラフィティライターを追いかけて……松本清張賞『イッツ・ダ・ボム』など新人作家によるミステリ3選(レビュー)
小松立人の『そして誰もいなくなるのか』(東京創元社)は、昨年の鮎川哲也賞の優秀作(受賞は岡本好貴『帆船軍艦の殺人』)。ある犯罪に関わった面々を乗せた車が崖崩れに遭い、全員が死亡した。だが彼らは、死神の都合で一週間前から人生をやり直すことになる。どうせ七日で死ぬのだが、仲間を殺せば、その余命が手に入る。この特異な状況下で、蘇った男たちが一人また一人と殺されていく……。特殊設定を活かした仕掛けに驚くのだが、それ以上に、この設定が生むサスペンスが刺激的だった。終止符も相当に強烈。特殊設定だからと敬遠せず、上質でダークなサスペンスを堪能して戴きたい。 [レビュアー]村上貴史(書評家) むらかみ・たかし 協力:新潮社 新潮社 小説新潮 Book Bang編集部 新潮社
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