AI企業との合併目指す「カジノ王のSPAC」、米ナスダックに上場
カジノ界の大物、ローレンス・ホーが出資する特別買収目的会社(SPAC)が米国時間8月28日、米ナスダックに上場した。人工知能(AI)ブームの恩恵を受ける企業との合併を目指す同社は、1億5000万ドル(約217億円)を調達した。 香港を拠点とするホーのファミリーオフィスであるブラック・スペード・キャピタルが設立したSPAC、ブラック・スペード・アクイジションIIは、目論見書によるとエンタメやライフスタイル、テクノロジー分野でAIの恩恵を受ける企業を買収する計画だ。このブランク・チェック・カンパニー(白紙小切手企業)は、AIを活用したバイオテクノロジーやインフラ企業との合併も視野に入れている。 AIに焦点を当てたこのSPACは、ホーがマカオのギャンブル事業以外で行う最新の投資だ。カジノ大手のメルコ・インターナショナル・デベロップメント会長兼CEOであるホーは、2021年に最初のSPACのブラック・スペード・アクイジションをニューヨーク証券取引所に上場させて1億6900万ドル(約245億円)を調達した。その2年後に同社は、ベトナムの電気自動車(EV)メーカーのVinFast Auto(ビンファスト・オート)と230億ドル(約3兆3351億円)規模の事業統合を完了した。 上場当初にフリーフロート(一般投資家が自由に売買できる株式)が1%未満と非常に少なかったビンファストの株価は急騰し、ピーク時の2023年8月28日につけた時価総額は1900億ドル(約27兆5000億円)に達していた。しかし、その後、同社の株価は95%以上も下落した。また、ホーが支配する別のSPACは、2022年に香港証券取引所での資金調達を申請したが、その申請は失効したままとなっている。 一方、メルコ・インターナショナル・デベロップメントの子会社であるメルコ・リゾーツ・アンド・エンターテイメントは昨年7月、地中海のキプロス島で6億6200万ドル(約959億円)を投じた統合型カジノリゾートを開業した。このプロジェクトは、中国政府がマカオにあるカジノの取り締まりを強化したことにより打撃を受けたメルコにとって、初のヨーロッパへの進出となった。 故スタンレー・ホーの息子であるローレンスは、中国によるカジノの規制強化で保有資産を急減させた。フォーブスが毎年発表する「香港の50人の富豪リスト」の常連だったローレンスは、今年そのランキングから姿を消している。
Zinnia Lee