10年間“卒業”できなかったVAIOがノジマ傘下に入る理由
ここ数年で急速なV字回復を実現し急成長したVAIO
長年投資中フェーズにあったVAIOだが、ノジマが2025年1月に特定目的会社(SPC)を通して買収することになった。手法としては、ノジマのSPCがJIP傘下の持株会社(VJホールディングス3)を買収した上で、同SPCがJIP傘下のファンド(JIPキャピタル事業成長パラレル投資事業有限責任組合)が保有するVAIO株式も引き取ることで、合わせて約93%のVAIO株式を間接保有することになる。 ノジマが取得にかける予定の費用は112億円で、内訳は株式譲渡にかかる分(持株会社の買収+株式譲受)が111億円、その他の費用(アドバイザリー費用など)が約1億円とされている。 そうなると、次に浮かんでくる疑問として「ノジマ(あるいは今回は明らかになっていない他の売却候補)にとって、『10年卒業できなかったVAIO』のどこが魅力的だったのか?」という点が挙げられる。実は、買収に当たってノジマが公表した適時開示情報にそのヒントが隠されている。 この適時開示情報には、VAIOの過去3年間における決算状況が記載されている。以下にまとめたのでよく見てみてほしい(同社の会計年度は6月1日~翌年5月31日となっている)。 これを見て分かる通り、2022年5月期は純利益が3億2900万円の赤字だったのが、2023年5月期には7億1900万円の黒字、2024年5月期には9億8500万円の黒字と急速にV字回復している。それに貢献しているのが、サービスを含めた総売上高を示す「売上収益」だ。2022年5月期から2期(2年間)で、実に約1.87倍に増えている。 2023年6月~2024年5月の2年間は、PC産業はよくいえば「停滞期」、悪くいえば「マイナス成長期」だった。JEITA(電子情報技術産業協会)が発表した2023年度(2023年4月~2024年3月)のPC総出荷台数(※1)は668万2千台と、前年度比96.8%のマイナス成長となった。 (※1)JEITA加盟社のみの集計値(Apple Japanやデル・テクノロジーズなど、未加盟社のデータは含まれない) そういう市場環境の中で、VAIOはどうだったのだろうか。7月にVAIO設立10周年を迎えた際に、筆者が同社の林薫氏(取締役執行役員)にインタビュー取材で尋ねたところ、「直近の会計年度は、2期前と比較して売上高も台数も2倍になっている」と述べていた。これは、ノジマの適時開示情報に掲載された情報とほぼ合致している。 つまり、こうした売上高の拡大は簡単にいうと本業であるPC事業で成功を収められた成果ということになる。市場がマイナス成長の中でも、VAIOは着実に成長している――そういうことだ。