「裏切られた」不登校だった少年が抱えていた孤独 学校にあらがい続けた13歳の死、教育委員会の対応は「機能不全」に
翔さん「おれが休んでるのは、学校のせいやで」 教師「どういう理由で?」 翔さん「あなたたちが裏切るからやん」 教師「どんな裏切り行為をしたの?」 翔さん「なんで言わないとあかん?」 教師「言わないとわからへんやん。裏切りは、私たちはしてないと思ってる」 翔さん「で、何?言って終わり。さようなら。他に何か話すことあるん?」 教師「学校行こう」 翔さん「口開けたら、学校行こうなん?」 教師「そうや。学校来てほしいから」 会話はいつもこうした流れで平行線をたどる。教師たちは何度も自宅に足を運び、登校するよう呼びかけるが、翔君の真意はくみ取れない。翔さんも「何か文句あるん?」「一生来るな。来ても(学校には)行かん」などと荒い言葉づかいで相手を拒み続ける。不登校になっている頃のやりとりは、ほとんどがその繰り返しだ。 一見すると、翔さんの態度に問題があったように読めるが、千栄子さんは「開示された文書の内容には実態と異なる部分も多い。『生徒本人や家庭に問題がある』という学校側の一方的な見方で作られている」と指摘する。
▽母に買って帰ったショートケーキ 指導記録では粗野な発言やトラブルばかりが強調されている翔さんだが、実際に交流のあった人たちの印象は大きく異なる。 子どもの居場所づくりに取り組むNPOで、何度か翔さんと話したという女性(44)はこう振り返る。「幼稚園児だったうちの子の面倒をみてくれる優しいお兄ちゃんだった。すごく落ち着いて、穏やかで。大人びていて、話の内容は中学生か高校生みたいだった」 2020年9月から半年間は、隣接する阪南市で障害者の保護者らが運営する「たんぽぽカフェ」を手伝っていた。翔さんの「仕事」は注文を聞いてカートリッジ式の機械でコーヒーをいれること。スタッフの女性たちからは「翔ちゃん、翔ちゃん」とかわいがられた。 スタッフの一人は、母親思いの優しい子だったと語る。「翔ちゃんは小学生だったから、アルバイト代を渡すわけにはいかないでしょ。だから、お礼の代わりに一緒にケーキを買いに行ったの。そしたら『お母さんの分も』って言って、いちごのショートケーキを二つ買って帰ったわ」