「不死鳥」右腕は小学校の先生 高知支えるOBの力 選抜高校野球
兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開催中の第94回選抜高校野球大会に4年ぶりに出場する高知には、陰で支える「不死鳥」右腕がいる。OBで社会人野球でプレーする松井佑二投手(31)。外部コーチとして、さまざまな役回りをこなし、浜口佳久監督(46)や選手からの信頼は厚い。 2月上旬に行われた紅白戦。松井さんは力強い直球で高知の打者を抑え、社会人の貫禄を見せつけた。松井さんはクラブチームの松山フェニックスに所属し、2014年の都市対抗ではエースとして活躍。チームを本大会初出場に導き、東京ドームでも1勝を挙げた。17年から地元・高知市に戻ったのを機に、自身の練習を兼ねて高知で指導を始めた。昨年からは小学校の教員と社会人野球選手を両立しながら、多い時は週の半分は高知のグラウンドに顔を出す。 浜口監督は「松井の存在は大きい。技術的な部分はもちろんだが、監督の私には言えない選手の悩み事を聞いてくれる」と感謝する。 今年のチームは打力が持ち味だが、昨秋の新チーム発足直後は自信を持っていなかった。阪神にドラフト1位で入団した森木大智(18)らがいた前チームと比べて大黒柱が不在なため、主将の谷崎陽(3年)から「僕らは大丈夫ですかね」と相談された。松井さんは「客観的に見て、打撃はお前ら(現チーム)が上や。投手力は正直、今のままでは厳しい」と率直に伝え、必要以上に不安に思わなくていいと強調した。 松井さんは選手の気持ちが痛いほどよく分かる。「僕たちの1個上の代も(06年に)明治神宮大会で優勝するほどタレントぞろいで比較された」。それでもがむしゃらに練習することで、08年夏の甲子園の出場を果たした。 投手陣への技術的なサポートも厚い。ここ数年悩まされた右肩痛が治ったことで、今年は投手陣と一緒にブルペンで投げながら教えている。主戦の山下圭太投手(3年)は「自分のあいまいな言葉を聞いて、具現化してくれる」と感謝する。実戦練習が始まった2月、山下は右足の股関節に体重を乗せようと取り組んでいた際、松井さんから「左足のつま先を内に入れた方がいい」と助言があった。体重がしっかり乗るようになり、3月の練習試合で自己最速を2キロ更新する136キロをマークした。 高知は1964年夏の甲子園で優勝し、75年センバツも優勝。地元の名門校だが、甲子園での勝利は4強入りした13年春が最後になる。 チームは21日に東洋大姫路(兵庫)戦に臨む。松井さんは「近畿勢のチームは強いといった変な意識はせず、練習はしっかりやっているので、自信をもってやれば勝ち上がれる」と語る。もう一度、ひのき舞台での活躍を目指す不死鳥右腕。自身との共通点がある母校の復活を期待しないはずがない。【安田光高】 ◇全31試合をライブ中継 公式サイト「センバツLIVE!」(https://mainichi.jp/koshien/senbatsu/2022)では大会期間中、全31試合を動画中継します。また、「スポーツナビ」(https://baseball.yahoo.co.jp/hsb_spring/)でも展開します。