【遺産総額9,500万円】70代父の死…40代長男「相続税額ゼロ」の可能性に舞い上がるも、厳しい実情に呆然。「気づかなかった…」大後悔のワケ
「小規模宅地等の特例」の適用で、相続税不要になるはずが…
小規模宅地等の特例が適用できれば、自宅敷地の330m2まで80%が評価減できます。鈴木さんの自宅敷地は260m2、評価は6,500万円ですが、特例の適用で自宅の土地の評価はもとの20%の1,300万円になり、財産の総額は4,300万円となります。 すると、4,800万円の基礎控除以下の財産評価となり、相続税の申告は必要ですが、相続税はかからない計算となるのです。 「それはよかった!」 胸をなでおろした鈴木さんですが、ここで問題が発覚します。 じつは、融資を受ける銀行の勧めもあったことから、1階は預貯金で支払った父親名義、2~3階は銀行融資を受けた鈴木さん名義という区分登記となっていたのです。
父と子で自宅を「区分登記」…小規模宅地等の特例はどうなる?
今回の鈴木さんの自宅の面積は260m2であることから、全体の80%減となれば、大きな評価減が期待できました。 しかし、建物を区分登記している場合、ひとつの家でもマンションのように別々の家という扱いとなってしまいます。 鈴木さんの場合も、建物は父親が3分の1、鈴木さんが3分の2の割合で区分登記をしていますので、父親の家は1階の3分の1だけとなります。すると、自宅の土地も、3分の2は鈴木さんが父親から借りている土地という扱いになり、小規模宅地等の特例として80%減が適用される面積は、自宅敷地の3分の1のみとなってしまうのです。 「ローンを組んだときには、まったく気づきませんでした…」 筆者と提携先の税理士の説明に、鈴木さんは肩を落としました。
「区分登記」とはどのようなものか?
「区分所有」とは、建物全体を所有権の対象とするのではなく、建物の部屋(構造上区分された部分)ごとに所有権を設定するものです。分譲マンションをイメージすればわかりやすいでしょう。分譲マンションは、建物全体に対して所有権を設定しているわけでなく、部屋ごとに所有権が設定されており、そのような所有形態を区分所有といいます。 区分所有されている建物の登記簿には、「表題部(一棟の建物の表示)」「表題部(専有部分の建物の表示)という記載がある一方、区分所有されていない(単独所有又は共有されている)建物の登記簿では「表題部(主たる建物の表示)」という記載になっているので、違いがわかります。