全盛期は排気量が4つも!70年代レジャーバイク、スズキ・バンバン シリーズ50/75/90/125って知ってますか?
レジャーバイクに新風を吹き込んだ個性派バンバン
1970年代が明けて間もなくレジャーバイクブームが国内に到来する中、国内第3のメーカーであるスズキが開発を目指したのは、北米市場を意識し、砂地をはじめとした不整地で遊べるバイクだった。 【画像11点】1970年代の人気レジャーバイク「スズキ・バンバン」の個性に迫る! 我が国でのレジャーバイク黎明期の代表作は、60年代後半に登場したホンダのモンキーやダックスらで、両車の特徴は車体を極力軽くコンパクトに作り、ハンドルを折りたたんで4輪のトランクにも積みやすくしたこと。旅先での短距離移動、ないし近所のお散歩の足としてのレジャーバイクを具現化したのだが、スズキが目指したのは別のキャラクターだった。 車名のVanvan(以下バンバン)は、VAN(英語で「前衛」を意味する)をふたつ重ねることで、飛び抜けて前衛的なモデルを意図したもの。同車は当初、砂の上など不整地を走って楽しいバイクを第一のねらいとした。環境保護に関する規制が厳しくなかった70年前後のアメリカには、まだ砂漠や海岸沿いにはバイクが乗り入れられる場所が各地にあってダート天国だったというが、そんな地で受け入れられる魅力的なレジャーモデルを目指したのだ。開発陣は、実地見聞を兼ねてアメリカに出かけ、現地でのバイクの使われ方やユーザーの嗜好調査などを実施。その結果導き出されたのが、砂地で気軽に乗れるダートバイクだったのである。 もうひとつ、最初に開発されたバンバン90の特徴は、大人の乗れるレジャーバイクということ。アメリカ市場に渡ったコンパクトな日本製バイクには、それ以前にモンキー、カワサキ・コヨーテ、スズキMT50ホッパーなどの例があるが、多くが子供向けのミニバイク需要をねらったもの。それらと異なるバンバンの開発意図は、発売時のバンバン90のアメリカ市場向けカタログでの、以下の宣伝文句が物語っている。 「新しいジャンルのバイクを紹介します。あなたはこれに乗り、どんな場所にも好きなときに到達できるでしょう。大きく太いこのタイヤは、ラフロード、ガレ場、砂の上や雪の上、泥濘や水たまりもスムーズに通過できます。公道走行もできて操作も簡単……(後略)」。 子供向けのクリスマスプレゼントではなく、大人に向けて好きな道を走れることを提言していたのだ。