全盛期は排気量が4つも!70年代レジャーバイク、スズキ・バンバン シリーズ50/75/90/125って知ってますか?
北米市場での不振と、日本での予想外のヒット
同車の最大の特徴は極太のレクタングルタイヤだ。見た目のボリュームからバルーンタイヤとも言われるが、低圧で使用される同品(標準指定空気圧は0.8kg/cm2、不整地走行では0.6㎏/cm2以下)を、砂地でも普通の舗装路でも違和感なく走らせるには相応の試行錯誤があったという。砂をうまく噛むタイヤパターンと舗装路で違和感のない走行性を両立する難しさだが、スズキ開発陣はタイヤメーカー・ブリヂストンの協力でこれを製品化するのだが……。 足着き性のよい車高と前述のタイヤでの砂地等での高い走破性を実現した同車は、フタを開けてみると、アメリカ市場でのセールスは芳しくなかった。大柄なアメリカ人にとっては車格が小さすぎると評価され、馬力を食われる不整地での90ccは非力すぎるとの意見が多くを占めたという。そして、当初の油圧ダンパーなしでスプリングのみのフロントフォーク(後に油圧式に変更)は、不整地での走りで物足りないとの評価も下された。スズキ側は、その部分を特徴的なレクタングルタイヤの空気圧調整で補ってもらう意図(そのためエアポンプとエアゲージが標準装備された)があったが、前例のないレジャーバイクは、結果的に彼の地では浸透しなかったのだ。 ねらった場所で評価を得られないことは、作り手としては残念だったに違いない。だが、バンバンの前衛性は意外にも自国で評価された。国内では71年の東京モーターショーで展示され、今まで見たこともないフォルムデザインが注目を集めたのだ。90を販売した翌年には日本での入門クラスの50ccにもバンバンが投入されるが、これも意外なる90の人気が後押ししてのもの。72年のバンバン50登場でさらに人気を加速し、月産3000台でも売り物が足りないとの記述が、当時の誌面には出てくる。 72年10月のモーターサイクリスト誌で掲載された「売れてるクルマ再発見特集」という記事では、販売店のこんなコメントが紹介されている。 「なんというか、今まで見ないようなMCということで、人目を引きつけているようです。特に若い人たちに人気が集中しているようで、高校生なんかあっちこっち触ってみたりします」「人気の原因は、車体が軽くて乗りやすそうで、しかも安心感があって、なんとなくシャレたバイクと感じられる……」という具合に、実に好評。90から始まり、裾野の広い50(72年)、さらに上級クラスの125(72年)、中間機種の75(73年)の登場なども、70年代前半のバンバン人気をよく表している。 まとめ●モーサイ編集部・阪本 写真・資料●八重洲出版アーカイブ、スズキ