「高齢者が積極的に運転免許を返納する必要はない」…意外と知られていない"高齢のドライバー"をめぐる現実
■自主返納されなくても、運転リスクを抑制する枠組みがある 現在、71歳以上の免許有効期間は70歳以下より短く、70歳以上で運転免許を更新する際には、60分の実車を含む「高齢者講習」を受講することが更新の条件となっている。 2020年の道路交通法改正では、高齢者の運転免許更新制度が大きく変更された。75歳以上の場合、「高齢者講習」に加え「認知機能検査」で認知症のおそれがないことが確認されなければ免許更新ができず、更新前の3年間に一定の違反歴がある場合には「運転技能検査」に合格しなければ免許更新ができなくなったのだ。 さらに75歳以上の免許保有者が、信号無視や指定場所一時不停止等の違反を犯した場合には、「臨時認知機能検査」を受けることになっている。そこで認知機能の低下が見られた場合には、専門医による臨時適性検査の受検または医師の診断書の提出が必要となり、認知症と診断された場合には免許証の取り消し・停止が行われることになっている。 つまり免許の自主返納が行われなくても、認知症等による運転のリスクを抑制するための枠組みがかなりしっかりと整備されているのだ。 ■東京は極端な「電車社会」である 筆者が企画、設計、分析を行っている「いい部屋ネット 街の住みここちランキング」の個票データから都道府県別の日常の交通手段を集計してみると、大きな違いがあることが分かる。 日常使っている交通機関がクルマである比率が70%を超えるのは、群馬県、福井県、富山県、山梨県、長野県、鳥取県、徳島県など15県あり、逆に50%以下なのは、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、京都府、大阪府、兵庫県の7都府県のみとなっている。特に、東京都は16.3%と極端に低い。 日常使っている交通機関が鉄道である比率を見ると、30%を超えるのは埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県の8都府県のみで、10%以下なのは、青森県(1.4%)、山形県(1.5%)、鳥取県(1.3%)、徳島県(0.9%)、高知県(1.3%)など33県と多い。 大雑把に言えば、クルマと電車が半々くらいの首都圏、近畿圏と、電車をほとんど使わないその他地域に分かれているということだが、札幌市、仙台市、名古屋市、広島市、福岡市という政令市は鉄道利用率がやや上がる。