”いぶし銀のミスター広島”石原慶幸捕手が引退発表…謎リードの裏に19年間貫いた学びの精神と無形の力
「黒田さんと新井さんのカープ復帰が決まったときは興奮しました。本当に嬉しかった。これで優勝できるぞ、と心強かった。当時、僕が年齢的にチームで一番上の方だったんですが、2人の存在があまりに偉大だったので、黒田さんとバッテリーを組ませてもらい、もう一度、緊張感を持ってプレーができるようになったんです。僕自身もそしてチームもいい方向に向かいました。感動したゲームもたくさんありました」 石原は25年ぶりのリーグ優勝を飾った2016年には、ベストナインとゴールデングラブ賞を37歳にして初受賞した。2018年5月には、史上最年長となる38歳8カ月で通算1000本安打を達成した。 生涯カープを貫いた。 2010年にFA権を得た際、実は、落合博満監督が率いる中日からアプローチがあったが、一切の迷いはなかった。「僕はそういうレベルの選手じゃない。こんな僕の面倒をみてくれている広島に生涯尽くしたい」。 丁重に断りを入れた。カープ愛にあふれたプレーヤーだった。 おそらく石原は球団からコーチとしての入閣オファーを受けると考えられる。彼の経験と野球理論、そして人格。いいコーチになるだろう。 カープの暗黒期からリーグ3連覇まで、マスク越しにカープの地獄も天国も見てきた石原は、通算1619試合に出場し、打率.236、1022安打、66本塁打、378打点の成績を残した。1022安打は広島の捕手では過去最多である。19年間の“いぶし銀人生“。それは黄金色に輝く価値のあるものだった。 (文責・駒沢悟/スポーツライター)