センバツ2023 香川勢、善戦に拍手 高松商、反撃及ばず 英明、1点差に泣く /香川
第95回記念選抜高校野球大会第7日の25日、7年ぶりに香川県から2校出場となった高松商と英明が登場。今大会初戦となる高松商は、2回戦で東邦(愛知)に先制しながら3―6で逆転負け。2回戦で大会初勝利を挙げた英明は、3回戦で作新学院(栃木)と追いつ追われつの熱戦を展開したが、8―9で惜敗した。ともに姿を消したが、最後まで諦めない姿勢に、応援席からは惜しみない拍手が送られた。【中田博維、山口敬人、来住哲司、猪森万里夏】 ◇大会初戦、東邦に先制も逆転許す 立ち上がりは高松商のペースだった。一回に2安打。得点はできなかったがリズムをつかむと、二回は村山由空(ゆう)の内野安打から2死三塁とし、大室亮満が中堅にはじき返して先制した。 大室は投球でも素晴らしい立ち上がり。三回まで許した安打はわずか1本。3三振を奪い、「コントロールが持ち味と周囲から言われているが、三振も取ってほしい」いう父真一さん(60)の期待に応えた。 だが、四回1死一塁から、自らのけん制悪送球でリズムを崩す(記録は盗塁と失策)。1死三塁とピンチは広がり、相手の3番、4番へは強気に内角を突いたものの、いずれも三塁線を破られる連続適時二塁打。逆転を許し、五回には一塁ベースに打球が当たる不運も重なって追加点を奪われた。「(けん制悪送球が)痛かった。あれで流れが変わったが、大室は100%の力を出せたと思う」と捕手の佐藤颯人はエースを思いやった。 七回は2死二、三塁で佐藤瑞祇の遊撃への鋭い打球が敵失を誘って2得点。1点差に詰め寄ったが、反撃もここまでだった。 出場36校中最後の登場で、雨による順延もあって試合は開会式から7日後。4打席目でようやく安打を放った市ノ瀬夢蔵(むさし)は「調子は良かったが、期間が長くてリズムが崩れた」と振り返った。チームとしても計9安打を放ちながら攻めきれない展開が続いた。横井亮太主将は「冬は打撃に力を入れてきたが、もっと集中力を上げ実を結ぶ練習をしないと」。夏に向けた戦いは始まっている。 ◇気を吐いた4番 ○…高松商の4番・久保慶太郎が3安打1死球と気を吐いた。もっとも、一回2死二塁ではスライダーを中前に運びながらも本塁への好返球で先制点を阻止され、その後も自身は得点に絡めなかった。「自分は打ったけど、チームとして守り勝つ野球ができなかった」と悔やんだ。昨夏の甲子園では準々決勝の近江戦でエース右腕・山田陽翔(現西武)から2安打。「あれが今の自信につながっている」と振り返り、「負けた原因ははっきりしている。夏までに鍛えたい」と誓った。 ◇粘り強さと集中力、作新ゆさぶる 集中力と粘り。負けはしたが、英明が持てる力を存分に発揮した。まずは六回。1死から5番・中浦浩志朗が四球を選ぶと大島陵翔(やまと)が右前打で続き、尾中亮太の右翼への適時二塁打で勝ち越し。ここまで2三振の清家準も右前適時打を放ち、「うまくバットが出てくれた。右飛かと思ったが前に落ちてくれた」と振り返った。さらに高松宏季が投手前にスクイズ(記録は安打)を決めて、4連打で計3点を奪った。 逆転を許した直後の八回は、上位打線がつなぐ。2死三塁から1番・鈴木昊(そら)が詰まりながら左前へ適時打。平見歩舞も遊撃内野安打ときれいな形ではなかったが、しぶとく続き、百々愛輝(どどあいき)の逆転3点本塁打を演出。九回も2死一、三塁と最後まで相手を追い詰めた。 この日先発出場した9人中、4人が身長160センチ台。昨夏のチームから残ったのは4番に座る寿賀弘都だけと小柄で経験の少ないチームだが、昨年秋の公式戦10試合(9勝1敗)のうち、2点差以内の試合が8試合(7勝1敗)と粘り強く戦ってきた。 「粘り強さがないと勝てない」(尾中)、「一球一球全力でやること」(百々)と選手たちも自らの長所を甲子園の戦いで改めて実感したが、最後あと1点届かなかったことも事実。主将の中浦は「自分たちの力は出し切ったが、悔いは残る。素晴らしいチームと試合ができた経験を糧に、もう一度、一から頑張りたい」と夏を見据えた。 ◇初先発、投打活躍 ○…英明は左腕・寿賀が公式戦初先発。初戦で救援登板した際に捕手の送球を受けた左肘の痛みはなかったがマウンドは「ちょっと不安だった」。いつもとは違う、試合を作るという役割と甲子園の大舞台に「1イニングが長く感じた」という。97球を投げ、疲れの出た八回途中で降板したが、打者としては「投手で緊張していたので、何も考えずに打席に入れた」と3安打1打点の活躍。悔しい敗戦にも「大差ではなかったし、うちは力がないが、その中で試合をどう運んでいくかを学んだ」と貴重な財産を得たようだった。