「空気が読めない」「正直すぎる」 発達特性を持つ人の会話で起こりがちな問題
ナレーター、声優として活躍する中村郁さんは、 ADHDやASDといった発達特性によって様々な困りごとを抱えてきたといいます。なかでも、もっとも悩んできたものは人間関係です。長年の経験から編み出した、周囲の人と軋轢を生まないちょうどいい関係性を保つためのコミュニケーションのコツについて書籍『発達障害・グレーゾーンかもしれない人の仕事術』より紹介します。 人間関係が良くなる8か条 ※本稿は、中村郁著『発達障害・グレーゾーンかもしれない人の仕事術』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
自分がされて嬉しいこと=相手が喜ぶことではない
発達障害を持つ人は、とてもピュアで優しい人が多いと思っています。 嘘がつけない。本音を伝えてくれる。たくさん傷ついてきたので人の痛みがわかる。常に努力をしている。これらは、私の知る発達障害の人に共通する部分です。 そんな私たちですが、世間からは、「空気が読めない」「気配りができない」「わがままで自己中心的」「正直にものを言いすぎる」などと思われることが多いようです。純粋でひたむきに生きている発達障害の人たちが、このような捉え方をされてしまうのはなんとも悲しい事実です。 しかし、私なりに過去の経験から検証した結果、この悲しい事実に至るには、理由があることがわかりました。発達障害を持つ私たちは、自分基準で物事を考えてしまうのです。 こんな経験はありませんか? 職場の誰かが髪の毛を切りました。あなたは素直な気持ちを伝えます。 「前の髪型のほうがよかったですね」 すると相手の顔はみるみる曇り、不愉快そうに去っていってしまった。 このとき、相手を傷つけようなどと思っていたわけではなかったはずです。ただ思ったことを素直に伝えただけ。なぜなら、あなたは自分だったら素直に伝えてほしい、と思っているから。 よかれと思って口にしたことが、自分の意図と違うことになるのは、悲しいことですよね。この点が、私たちが社会生活を送る上で、最も注意しなければならないところです。 この世は自分と同じ考えの人ばかりではありません。価値基準も人それぞれです。さまざまな方がいるのですから、「自分がされて嬉しいこと」が、必ずしも「相手も喜ぶこと」とは限らないのです。あなたの優しさは、相手にとって迷惑行為となりうるのです。相手が望んでいないことを押し付けるのは、自己中心的な行動です。 「自分がされて嬉しいことを相手にもしなさい」とは、よく一般的に言われる言葉ですが、私たちにそれは当てはまりません。「自分がされて嬉しいこと=相手が喜ぶこと」ではないことを、まずは心に刻みましょう。