「消えたビデオ配信」...「完全に無視された」女性記者が裁判で目の当たりにしたロシア政府の《深すぎる闇》
「NO WAR 戦争をやめろ、プロパガンダを信じるな」...ウクライナ戦争勃発後モスクワの政府系テレビ局のニュース番組に乱入し、反戦ポスターを掲げたロシア人女性、マリーナ・オフシャンニコワ。その日を境に彼女はロシア当局に徹底的に追い回され、近親者を含む国内多数派からの糾弾の対象となり、危険と隣り合わせの中ジャーナリズムの戦いに身を投じることになった。 【写真】習近平の第一夫人「彭麗媛」(ポン・リーユアン)の美貌とファッション ロシアを代表するテレビ局のニュースディレクターとして何不自由ない生活を送っていた彼女が、人生の全てを投げ出して抗議行動に走った理由は一体何だったのか。 長年政府系メディアでプロパガンダに加担せざるを得なかったオフシャンニコワが目の当たりにしてきたロシアメディアの「リアル」と、決死の国外脱出へ至るその後の戦いを、『2022年のモスクワで、反戦を訴える』(マリーナ・オフシャンニコワ著)より抜粋してお届けする。 『2022年のモスクワで、反戦を訴える』連載第44回 『「別の学校へは行きたくない!」...母親と再会した娘に襲い掛かるロシア政府の恐ろしい《怪物》』より続く
犯罪の承認に仕立てようと
「どうしたらいいんでしょう」クリスティーナがザフヴァトフ弁護士に電話した。「たったいま係官からわたし宛に電話があって、取調委員会の訊問に呼び出されたんです」 「すぐ診断書を取りなさい。ちょうど、風邪をひいたと言ってたじゃないですか」弁護士がアドバイスした。 「たぶんあなたをマリーナの共犯か犯罪の証人に仕立てようと判断したんでしょう。おそらく監視カメラの録画を見て、あなたがクレムリンのところで抗議行動を携帯で撮影していたのを見つけたんだと思います。こうやって彼らはオフシャンニコワに圧力をかけ、あらゆる支援を奪おうとしているんです」 クリスティーナは労働不能証明をもらいに医者のところに飛んでいった。この時わたしの家に、連邦刑執行庁の女性地区署長がチェックにやってきた。 ドアを開けた。背の高い金髪の女性が、悪意と憎悪に顔を歪めて立っていた。彼女がいるところでは、査察官はわたしと気の置けない会話はもう交わさず、マニュアル通りの行動をとった。
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