まさに“中華の地方フュージョン”。中国料理の雄・山口祐介シェフが表現する最先端の味を、麻布台ヒルズで
山口シェフによれば「中国で2年半余り暮らして気づいたのは、当たり前のことですが、“現地のレストランの料理はどんどん進化している”ということです。日本の中国料理は、現地の20~30年前の中国料理といった印象ですね。調味料にしても食材にしても、現地では既にボーダレス。地方の垣根は越えてますね」とのこと。それゆえ、ここでは中華の地方フュージョンを提案。そのいい例が、夏のおすすめメニューの一つ「マッドクラブ 翡翠に仕立てた文思豆腐と卵の芙蓉蒸し」だ。
“文思豆腐”とは、揚州地方に伝わる伝統料理で、清朝乾隆帝の時代に揚州天寧寺の文思和尚が考案したと言われている精進料理の一つ。いわば豆腐の千切りスープなのだが、軟らかな豆腐を素麺の如く細く切るのは、まさに手練の業! 山口シェフは、この文思豆腐を翡翠色も美しいほうれん草のスープ仕立てにし、下には、広東の家庭でもおなじみの“蒸蛋”こと茶碗蒸しを忍ばせている。上にのせたマッドクラブがホテルらしい豪華さを演出したこの一皿は、揚州料理と広東料理を融合させた佳品となっている。
また、「本日の鮮魚 潮州風レモンガーリック蒸し 蟠龍仕立て」は、通常は一尾丸ごと蒸すところを龍に見立てる趣向も見事。見た目の美々しさと共に、取り分けやすさや食べやすさも考慮した盛りつけが秀逸だ。山口シェフによれば、潮州料理では、塩レモンやニンニクと共に魚を蒸すことが多いそうで、爽やかな酸味と塩味が、食欲を一層増してくれるはず。
前述の2品は、6名以上の個室利用でおまかせコース(1名28,000円~)を予約した場合に提供される料理となっている。ディナーコース自体は21,000円から用意されており、アラカルトメニューも豊富。山口シェフ曰く「昔ながらに、大皿をシェアして食べる中国料理ならではの醍醐味を味わってほしい」とのこと。そこには、ホテル全体のコンセプトでもある“人と人とのつながり”を反映する意味合いも込められている。 ※コース価格は取材時の料金