アメリカ大統領選最終盤、勝敗決める激戦州はどんな場所? 争点をおさらい、ホワイトハウスの主になるのは誰だ
11月5日に投票日を迎えるアメリカ大統領選。その勝敗は、七つの激戦州が握る。選挙戦最終盤、民主党候補のハリス副大統領(60)と共和党候補のトランプ前大統領(78)はそれぞれ激戦州を駆け回り、資金をつぎ込んで大量の広告を流すなど支持獲得に必死だ。なぜ激戦州は重要なのか。各州で何が争点になっているのか。ホワイトハウスの主になるのはどちらなのだろうか。(共同通信ワシントン、ロサンゼルス支局) 【写真】「朝起きると人が死んでいる。1人や2人じゃない」「人ぷんが垂れ流され、汚臭がひどい」… 岸田首相が泊まった高級ホテルから2ブロック先には、人々がまるでゾンビのように… 【2023アメリカは今】
※記者が音声でも解説しています。「共同通信Podcast」でお聴きください。 ▽総得票数で負けても大統領に? アメリカの大統領選は得票総数ではなく、50州と首都ワシントンに人口に応じて割り振られた選挙人計538人の獲得を競い、過半数の270人を得た候補が当選する。人口が多い西部カリフォルニア州で勝てば54人、南部テキサス州では40人の選挙人を得られる。人口が少ない東部デラウェア州や首都ワシントンは3人ずつだ。 大統領選挙人制度と呼ばれ、憲法で規定されている。2000年に共和党のジョージ・ブッシュ氏、2016年にトランプ氏が、総得票数では相手候補に及ばなかったものの、選挙人270人を獲得して大統領の座に就いた。両選挙で敗北した民主党からは「制度を廃止すべきだ」との声が上がるが、憲法改正が必要なこともあり、ハードルが高い。 ▽パープルステート 大多数の州は民主党、あるいは共和党の優勢が明確で、今回の大統領選でも投票日の前から結果が見えている。これを基に計算するとハリス氏は226人、トランプ氏は219人の選挙人の獲得が確実視されている。
どちらが勝つか予測がつかない激戦州は今回七つ。大統領選のたびに勝者が入れ替わるスウィングステート(揺れる州)、民主党のシンボルカラーの青と共和党の赤が混じったパープルステート(紫の州)とも呼ばれる。ハリス氏とトランプ氏が7州の選挙人計93人を争う構図だ。 ▽さびた工業地帯の揺れる有権者たち 七つの激戦州の特色を順に紹介しよう。 まず激戦州のうち三つは、アメリカ東部から中西部にかけ、鉄鋼や自動車などの主要産業が衰退したラストベルト(さびた工業地帯)に位置する。もともと民主党地盤のブルーウォール(青い壁)と呼ばれていたが、産業構造の変化に取り残されて不満を募らせていた白人労働者が2016年大統領選でトランプ氏を支持し、勝利に貢献した。 (1)東部ペンシルベニア州(選挙人19人) 七つの激戦州の中で最も多い選挙人19人が割り当てられており、今回の大統領選の最重要州と目される。かつては世界有数の鉄鋼の町として栄えたピッツバーグは、日本製鉄による大手USスチール買収計画で揺れる。全米鉄鋼労働組合(USW)は強く反発するが、実際に工場で働く労働者には生活維持を期待し賛成する意見も多い。さびれた町で聞こえてくるのはトランプ氏への期待だ。「トランプ時代は今よりもずっと暮らしがよかった」(30代男性)