若手台頭、企画多様化 日本映画界に新たな息吹:総まくり2024年
日本映画の新しい動きが見えた2024年だった。興行面では邦画の好調が続く。興行収入は「名探偵コナン 100万ドルの五稜郭」が157億円、「劇場版ハイキュー‼ゴミ捨て場の決戦」116億円とアニメ2本が100億円を超える大ヒット。他にも、23年末公開の「劇場版SPY×FAMILY CODE WHITE」「機動戦士ガンダムSEEDFREEDOM」などアニメが50億円超。日本映画のアニメ頼みは固定化した感がある。 【写真】第81回ベネチア国際映画祭で「HAPPYEND」が上映された空音央監督は、パレスチナの国旗と民族衣装を身に着け登場 一方、上位にはシリーズ3作目の「キングダム 王の帰還」、テレビドラマの世界観を下敷きにしたオリジナル作品「ラストマイル」、Youtubeの人気動画が原作の「変な家」が入り、尺数60分に満たないアニメ「ルックバック」や、単館上映から始まった自主製作時代劇「侍タイムスリッパー」もヒット。定番の人気マンガ原作やドラマの映画版ではない出自の作品も並び、多様化の兆しも見えている。
快作、怪作次々外国映画 興行低迷でも豊作
それでも年間総興行収入が2000億円に届かず昨年を下回る見込みなのは、洋画の地盤沈下が深刻なせいだ。スターの不在に加え、「カンヌ」「オスカー」といった海外映画賞もかつての威光はない。洋画メジャーが主戦場を配信に移す傾向もある。ハリウッドストの影響で作品数が激減したことも大きいとはいえ、低空飛行は24年だけではない。しかし作品的には豊作だった。ヨルゴス・ランティモス監督の「哀れなるものたち」「憐(あわ)れみの3章」が同じ年に公開され、「ボーはおそれている」「ロボット・ドリームズ」など佳作、秀作が目白押しの日本の映画環境の豊かさは、もっと認識されていい。 日本映画関連の受賞が相次いだが、ここにも新しい力が感じられる。カンヌ国際映画祭で国際映画批評家連盟賞の「ナミビアの砂漠」は、山中瑶子監督の長編2作目。米エミー賞で作品賞、主演男優賞などを得たドラマ「SHOGUN 将軍」は、主演した真田広之の尽力もあり、時代劇の可能性を示した。