「キャプテン翼」で3人に1人がアニメオタクに…中東の大国が「アメリカより、中国より、日本」を選ぶ理由
■イスラム圏で受け入れられた「アイドル文化」 たとえば、アイドル産業の輸出などは日本と東南アジア地域との交流深化に大いに役立っている。JKT48は、ジャカルタを中心に活動しているインドネシアの女性アイドルグループであり、今から10年以上前の2011年にAKB48の姉妹グループとして発足した。同グループは露出面でイスラム文化に配慮しつつも成功をおさめ、2024年7月にはマレーシアのクアラルンプールでもKLP48が発足している。イスラム圏においても「アイドル」という概念が認知されたこと、そして日本のソフトパワーを単純に輸出するだけでなく、現地のイスラム圏で融合して受け入れられたことは極めて画期的なことだ。 イスラム圏でも日本製品は幅広く使われているが、文化そのものは水と油の部分があるのではないかと思われていた。しかし、日本のコンテンツ力は文化の壁を超えて大きな広がりを見せつつある。 ■中東の大国では、3人に1人が「アニメ視聴者」 筆者が特に注目している国は中東のサウジアラビアだ。今、サウジアラビアほど日本のコンテンツ文化を積極的に受容して相互協力のもとに発展させようとしているイスラム圏の国は存在しない。サウジアラビアが注力している分野は漫画・アニメである。 同国のインターネットを通じたアニメ視聴者数は2017年で約40万人であったが、2022年には約1300万人に拡大している。サウジアラビアの人口は2024年で約3700万人なので、実に人口の3人に1人以上がアニメ視聴者という計算になる。さらに、驚くべきことに同国の教育省は中高生の学校教育の中にアニメを導入することを決定、その狙いはアニメから人間の成長や道徳心を学ぶというものだ。ソフトパワーが持つ影響力は精神性の伝播にあるが、それが厳格なイスラム教が適用される中東の地で花開いていることには驚く。 サウジアラビアの日本アニメへの傾倒ぶりは著しく、2021年には「ジャーニー 太古アラビア半島での奇跡と戦いの物語」というアニメが日本の東映アニメーション・サウジアラビアのマンガプロダクションズ社の合作映画として公開された。日本の技術とサウジアラビア文化が融合した作品であり、映像クオリティーや声優陣なども本格的なものだ。 そして、2024年11月3日にはサウジアアラビアの昔話を題材とした「アサティール2 未来の昔ばなし」というアニメの放映がテレビ東京系でスタートしている。今や、アニメという手法を通じて、サウジアラビアの文化が日本に逆輸出される状態となっているのだ。