日本が「格差社会」であり続けている驚愕の理由…「格差是正」を支持する人は少数派だった?
社長と社員の給与格差、どれくらいならOKですか? 日本では、資産5億円以上の超富裕層は9万世帯。単身世帯の34・5%は資産ゼローー。 【写真】日本はどうすれば格差社会を脱却できるのか? 富裕者をより富ませ、貧困者をより貧しくさせる今日の資本主義。 第一人者が明かす、貧困大国・日本への処方箋。 本記事では、日本が格差社会にいる理由などについてくわしくみていきます。 ※本記事は橘木俊詔『資本主義の宿命 経済学は格差とどう向き合ってきたか』から抜粋・編集したものです。
高所得者の存在が格差の象徴
『資本主義の宿命』の目的は、格差問題に対して経済学がどういう分析を重ねてきて、格差に対してどういう対処策を提出してきたかを明らかにすることにあった。 経済学に関しては、ピケティが『21世紀の資本』においてエポック・メイキングな分析を行って、格差問題において新しい視点を提供した。これまでの経済学は、貧困の存在と貧富の格差の大きいことを格差の象徴とみなして、分析を重ねてきた。 ところがピケティは高額所得者と高額資産保有者の存在を格差の象徴ととらえ、20世紀後半から現在にかけて資本主義国のみならず、発展途上国や社会主義国においてさえそれが深刻である、と統計上で示して我々に大きな刺激を与えた。 特に重要な国は資本主義国の代表国であるアメリカで、アメリカにおける高所得者の所得額、高資産保有者の資産額はものすごい額に達していると警鐘を鳴らした。ポスト・ピケティの経済学者はこれらアメリカの大富豪が節税、特に脱税にコミットする額は巨額に達していると明らかにした。 日本においても橘木・森『日本のお金持ち研究』(2005年)や野村総合研究所の分析で明らかにされたように、高所得者の数は増加しており、しかもその所得額も高くなっているが、まだアメリカほどの巨額の高所得・高資産額ではない。しかし日本は戦後一貫してアメリカの歩む道を踏襲してきた歴史があるので、将来は大富豪の目立つ国になるかもしれない。もしそうなった場合はこれこそが資本主義の宿命といえるだろう。 高額所得者がなぜ出現するかの経済学の理論分析は、20世紀後半になって少し出現したにすぎない。例えば「一人勝ちの理論」などがあるが、これからは本格的な経済学的分析がなされるべきである。 むしろ分析の進んだ分野は、高額所得者から多額の税金を徴収してよいか(いわゆる累進所得税の議論)の税理論である。これに関しては本書でもかなり議論をしたし、著者の主張は累進所得課税論の支持である。