iPhoneが一新:これがアップル社の新スタンダード【7000字レポート】
「一番大きく進化」標準モデルAirPods 4に新モデル追加
シリーズで一番大きく進化したのはお手頃価格の標準モデル、AirPods 4だ。何千もの耳の形状や5000万以上のデータを元に形を見直し、どんな耳にもフィットしやすくなった。充電用のケースもこれまでより10%小型になっている。 注目すべきは、標準モデルとほとんど見た目は変わらないが8000円だけ高いAirPods 4のアクティブノイズキャンセリング(ANC)付きモデルが新たに追加されたこと。周囲の騒音を打ち消し音楽に没頭できるアクティブノイズキャンセリングと、まるで何も装着していないように周囲の音が聞こえてくるトランスペアレントモードで音楽を楽しむことができる。これだけでも嬉しいが、さらにApple Watchの充電器などの上に置いてUSB-Cケーブルをささずにワイヤレス充電できたり、iPhoneの「探す」機能に対応し充電ケースがどこにあるか見失った時、ケースに追加されたスピーカーから音を鳴らして見つけ出すことができる。これらはいずれも高級モデル、AirPods Proだけで利用できる特権的な機能だったが、今シーズンからは差額8000円で利用できるようになる。
AirPods Proはソフトウェアで業界初の試みに挑戦
では特権を奪われたAirPods Proはどのように進化したのか。実は製品としてはこれまで通りだが、ソフトウェアによって進化している。 AirPods Proは元々イヤーチップで耳を密閉しており、音漏れをしっかり防ぎ、ノイズキャンセルング機能においても高音ノイズまでしっかりキャンセルしてくれる点でAirPods 4に対して大きなアドバンテージを持つ。 それに加えて今回、業界ソフトウェアをアップデートすることで、業界でも初となる耳の健康を守るための機能が新たに追加された。 それは、実は世界に約15億人いる難聴を減らすための機能だ。3人に1人が影響を受けている聴覚に影響を及ぼす可能性のあるレベルの大きな環境騒音を低減する予防機能や、数分で診断できる聴力テストのヒアリングチェック機能で定期的に自分の耳を健診でき、必要に応じて医療機関に相談する際に役立つデータを共有する機能なども用意される。さらに軽度から中程度の難聴の人には臨床レベルの補聴器に匹敵する性能を備えた処方箋不要のヒアリング補助の機能も搭載。Apple Watchの睡眠時無呼吸症候群の診断機能と合わせて、アップルが人々の健康促進にどれだけ真剣に向き合っているかが伺える機能だ。 製品価格はAirPods 4の通常モデルが2万1800円、アクティブノイズキャンセリング搭載モデルが2万9800円、AirPods Pro 2が3万9800円、AirPods Maxは8万4800円となっている。 * * * 長く続いた円安で、ここ数年、アップル製品がすっかり高価になってしまった印象もあるが、人生を支えるパートナーとしてそれに見合う価格を標準モデルにもふんだんに搭載した印象を受けた新製品発表会だった。 林信行 1990年からデジタル分野の最先端や最新イノベーションを生み出したきた主要人物の取材を続けているジャーナリスト/コンサルタント。テクノロジーは必ずしも人を幸せにしないと考えを改めてからは、良い未来を生み出すデザインやAI時代を生きるヒントをくれるアート作品、22世紀まで残したい伝統なども数多く取材している。リボルバー社社外取締役。金沢美術工芸大学名誉客員教授。Nobi(ノビ)の愛称でも親しまれている。